産業保健師は「体力的に楽」「楽しい」「給料が良い」と看護師転職でもかなり人気が高い職業ですが、頑張って勝ち取ったのにいざ働いてみると思っていたのと違ったと早期退職してしまう人も多いです。
看護師が厳しい世界であるため保健師の理想が高くなってしまうことが主な原因です。
産業保健師は楽しいだけじゃなく、社会人としての責任やそれなりの苦悩も持ち合わせています。
実際にどのようなことが辛いと感じるのか、現役保健師が経験談を通して解説します。
この記事を読んで自分が保健師として働く姿をイメージし、産業保健師になりたいという方がいれば、ぜひ転職をお考えください。その際は全力でサポートします。

Hana|産業保健師ブロガー
大学病院小児科3年
産業保健師4年目
第一種衛生管理者
【情報発信中】
・未経験からの産業保健師転職
・辛い看護師を乗り切るコツ
・美容・健康・ダイエット など
産業保健師の辛いこと
産業保健師の仕事をしていて、悩んだり、辛いなと感じたりする場面は主に5つあります。
- わからないことが多すぎる
- 仕事仲間は偉い人
- ストレスを吐き出す場がない
- 面談で相手にしてもらえない
- 会社からも相手にしてもらえない
看護師と違って人間関係よりも職場環境によるものが多く、解決策もまだ少ないです。
この記事では、私が苦悩に感じたことやその解決策をまとめています。
同じように産業保健師で悩んでいる人も参考になります。
わからないことが多すぎて手も足もでない

産業保健師は、看護職のなかでもかなりレア的な存在。周りに同じ仕事をしている友人は少ないです。業務内容もやり方も企業によって様々で正解がないことが解決できない原因としてあります。
そのため、業務マニュアルがなく、わからないことが多すぎます。
教育体制も整っておらず、看護学生の授業も薄く学ぶ程度。健康診断の事後措置、ストレスチェック、産業医面談・・・と項目は大体決まっていますが詳細な手順は人それぞれ。
具体的に健康診断の事後措置で悩む場面として以下のようなものがあります。
- 健康診断の再検査受診勧奨は一人ずつ面談する?書類を作成して送る?
- 社内を回って呼び出すの?管理職に日程調整してもらう?
- 少し悪い人でも勧奨する?
- もし、再検査に行ってくれない人はどうしたらいいの?
- 管理職も治療の必要性を感じていない場合はどうすればいいの?
マニュアルがないと介入の線引きが難しかったり、滞ってしまったときの対処方法がわからず、悩むことが多いです。

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【解決策】保健師コミュニティに参加する、さんぽセンターに問い合わせする
最近、産業保健スタッフが集まるコミュニティが増えてきています。
TwitterやInstagramなどSNSで盛り上がっていて、それぞれ保健師が抱える悩みを持ち合わせて話し合う機会を設けてくれるなど賑やかです。保健師だけでなく産業医も参加しており、とても勉強になります。
また、さんぽセンターに問い合わせるのもひとつの手です。
産業保健総合支援センターのこと。
各都道府県に設置されており、主に中小企業の産業保健業務を支援しています。
保健師向け研修も無料で開催しているのでおすすめ!
参考:各都道府県の設置場所
事業所に産業医がいない場合の産業医面談や労基への書類提出についてなど産業保健業務でわからないことはここへ聞くと丁寧に教えてくれます。
仕事仲間は偉い人ばかりで気を遣う

産業保健は管理職とのやり取りが重要ですが、周りに偉い人ばかり・・・萎縮してしまいがち。
保健師一人で1000人もの従業員を担当することもあります。各個人を把握するのは難しく、また従業員へ連絡するのも大変。そこで所属長(課長など)を利用して、一括して業務依頼をかけることが多いです。
慣れると関わり方や距離感をうまく取ることができますが、初めは「偉い人だから失礼のないようにしなきゃ・・・」と考えてためらう人も多いです。保健師は直属の部下ではないので、管理職と対等な立場で関わると上手くいきやすいです。
まだまだ女性管理職が少ないのでほとんど男性です。気が強い人、短期な人、おおっざっぱな人、全くやる気のない人など様々なので、上手くコミュニケーションをとることが重要です。
【解決策】医療知識を身につけ、信頼される人になる
良い職場環境をつくるには、まずは年上の方や管理職に信頼してもらうことです。
偉い人、といっても医療の知識はほぼ皆無です。自分の役割をきちんと果たし、頼られる人になると働きやすくなります。
専門職の立場として、企業に役立つことはたくさんできるはずです。実際に管理職から保健師に質問があったものを紹介します。
- 血圧がどれくらい高いと本当にヤバイ数値なの?
- 脳梗塞はストレスでなることもあるの?
- 貧血ってどこまで様子見でいいの?
- メンタルで休んでいる人に会社から連絡しても良い?
このように、看護師としては基本的なレベルであっても一般の人はわからない事が多いです。
保健師になってビックリしたのですが、Hb6.0で仕事を続けている人は結構います。これは結構ヤバイ状態で臨床では輸血するレベル。そのヤバさを知らずに働いている人、働かせている会社に病気や病気による事故を防ぐ方法を伝えます。

若いからと舐められないように、専門的知識を身につけて簡潔に話すように意識しています。
社内トラブルに介入することがあり、ストレスになる

従業員との面談ではメンタルダウンや人間関係における悩みを聞くことが多く、ストレスになります。そして、その件に関して愚痴をこぼす機会がないのが保健師の特徴です。
特に、最近社会的問題になっている「パワハラ」や「いじめ」は多いです。
この問題に介入することがありますが、被害者・加害者など決めつけず、中立的立場で対応するのが基本です。そして今以上にトラブルを大きくしないようにすることも大切。
保健師は従業員と仲良くなりすぎないように注意!
「課長と仲良いからそっちの味方なんでしょ」などと言われると信頼を失うことに繋がります。
自分から愚痴をこぼすことにも注意!
正直、面倒臭いなと感じる従業員もいますが、そこで愚痴をこぼすと社内全体から嫌われてしまい、信頼してもらえなくなります。
愚痴を吐き出す場がないため、ストレスがたまりやすくなります。
【解決策】愚痴る以外にストレス発散できることをする
ストレス発散方法は様々です。食事・睡眠・温泉・サウナ・ショッピング・トレーニングジム・散歩など、仕事以外で発散しましょう。
面談で相手にしてもらえないことが多い

従業員と面談をするとき、喜んでくれる人はまず少ないです。保健指導面談が多く、「保健指導=怒られる」「他人に余計なお世話をされたくない」とネガティブな印象を持っていることが原因としてあります。
実際によくある辛いケースを紹介します。
- 面談拒否。
- 無理やり面談に来たけど、聞く耳を持たない。「あなたになぜそんなに言われないといけないの?」「わかっているからもう呼ばないでくれ」などキツい一言も。
- 「血圧が高いから仕事休めって言われた。あんたのせいだよ。」と言われる。
【解決策】保健指導の方法を変える
「保健指導」と聞くと、治療の必要性や食事・運動・禁煙指導しなきゃと思うばかりですが、聞く耳を持たない人にとってこのような指導をしても逆効果。
ただの時間の無駄になり、また保健師のメンタルも落ち、結局対象者は健康障害を起こす・・・
「指導しなきゃ」と思わず、今対象者はどんな悩みがあるのか?なぜ怒っているのか?を考えて寄り添うことが大切です。
これについては「アドラー流保健指導」を読めば、この一冊で保健指導への考えが一転します。
難しいケースに出くわしたときも、自分のメンタルを保てるので今後保健指導を行う人にぜひ読んで欲しい一冊です。
会社の協力が得られない・相手にしてもらえない

面談で従業員に相手してもらえないこともありますが、会社からも相手にしてもらえないことがあります。この悩みが一番多いです。
実際に業務で相手にしてもらえないこと、このようなものがあります。
- 再検査結果の回収を管理職に依頼しても提出がない。
- ストレスチェックの実施率が低く、管理職が従業員に呼びかけをしてくれない。
- 休職者が出ても連絡がなく、2週間後の復帰時に産業医面談をしてくれと言われて発覚。
- 長期入院をして勝手に管理職が職場復帰させている。
- メンタルは管理職が手に負えなくなってから保健師に引き渡される。
このように会社側も産業保健の重要性を感じておらず、保健師が業務依頼をしてもやってくれない管理職がいます。
会社としては「業績重視で健康のことは後回し。仕事をしに来ているのに健康について言われても。」という感覚の人が多いです。
保健師の仕事が進まず、イライラしてしまうこともありさらにストレスが増えます。
【解決策】まずは管理職からヘルスリテラシーを高める
最近、社会的にも「健康経営」という言葉をよく耳にするようになりました。
「健康経営」とは、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に実践することです。企業理念に基づき、従業員等への健康投資を行うことは、従業員の活力向上や生産性の向上等の組織の活性化をもたらし、結果的に業績向上や株価向上につながると期待されます。(引用:経済産業省ホームページ)
従業員が健康でいることは、個人のパフォーマンス向上や生産性を上げることになるということを、まずは管理職に伝えていくことが重要です。
一人倒れてしまうだけでも、かなりマイナス。その一人分を補うのに他従業員にも負担がかかり、業績が下がる可能性もあります。
「健康」だけでなく「会社」としての損益という視点で伝えると理解してもらいやすいです。
【まとめ】産業保健師の辛いこと
実体験を通して産業保健師の辛いことをまとめました。それぞれの解決策をもとに経験を重ねながら少しずつ解決してくのが理想です。
- わからないことが多すぎて手も足も出ない
- 仕事仲間は偉い人ばかりで気を遣う
- 面談で社員から相手にしてもらえない
- 社内トラブルに介入することがストレスになる
- 会社から相手にしてもらえない
このサイトでは産業保健師になりたい人向けに転職情報を発信しています。転職相談は各SNSにて受け付けています。
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