「保健師になりたいけど、仕事を辞めなきゃいけないの?」
「最短でどのくらいかかるの?費用は?」
保健師への転職を考えたとき、多くの看護師さんがこんな疑問をもちます。
結論からお伝えすると、完全に働きながら保健師免許を取得するのは難しいのが現実です。しかし、準備と戦略次第で最短1年で取得し、転職することは十分に可能です。
この記事では、大学病院で看護師として働いたのちに産業保健師へ転職し、現在は保健師転職の支援実績60名以上をもつ筆者(Hana)が、看護師が保健師になるための3つのルートを徹底解説します。
費用・期間・難易度を正直にお伝えするので、ぜひ自分に合ったルートを見つけてみてください。
看護師が保健師になるために必要なこと【前提知識】
保健師になるには「国家試験合格+養成校修了」が必須
保健師は国家資格であり、保健師助産師看護師法において「保健師免許と看護師免許の両方」を保有することが定められています。
つまり、保健師になるには以下の2ステップが必要です。
- 文部科学大臣指定の学校(または都道府県知事指定の養成所)で1年以上の所定単位を修める
- 保健師国家試験に合格し、厚生労働大臣から免許を受ける
「働きながら取得」が難しい理由
最もよくある誤解が「通信や夜間で保健師免許が取れる」という認識です。残念ながら、現在の法制度では通信・夜間での取得はできません。
その理由は「臨地実習」の存在にあります。保健師養成課程には、保健所・市町村保健センター・企業などでの実習が必須カリキュラムとして組み込まれており、この実習は平日日中に行われます。
そのため「日中フルタイムで看護師として働きながら養成所に通う」ことは、物理的にほぼ不可能なのが実情です。
ただし「すでに保健師免許を持っている看護師」は話が別です。免許取得済みであれば、今の仕事を続けながら転職活動をし、保健師として働ける職場に転職する形が可能です。詳しくはルート③で解説します。
看護師が保健師になる3つのルート比較
保健師になる方法は大きく3つあります。まず全体像を表で確認しましょう。
| ルート | 期間 | 費用目安 | こんな人に向いている |
|---|---|---|---|
| ①保健師養成所(1年制) | 1年 | 50〜100万円 | 最短・費用を抑えて確実に取得したい人 |
| ②大学編入・大学院 | 1〜2年 | 100〜200万円 | 学歴を高めたい・研究・管理職を目指す人 |
| ③すでに免許保有→転職 | 随時 | ほぼ0円 | すでに保健師免許を持っている看護師 |
それぞれのルートについて、現実的な費用感・スケジュール・向いている人を詳しく解説します。
ルート①:保健師養成所(1年制専門学校)が最短ルート
概要・カリキュラム
保健師養成所は、看護師免許を取得した人が1年間で保健師国家試験の受験資格を得るための専門学校です。
全国に約40校程度あり、社会人・看護師経験者の入学者も多いのが特徴です。
カリキュラムは「公衆衛生看護学」「疫学・保健統計」「保健医療福祉行政論」などの講義と、保健所・市町村・企業での臨地実習で構成されています。
仕事との両立の現実
先述のとおり、日中は講義・実習があるため、フルタイム勤務との両立は困難です。
多くの方は「退職して通学」か「休職制度を利用して通学」するかを選択します。
ただし、夜勤専従バイトや週末限定の単発バイトと組み合わせている方もいます。
体力的な負担は大きいですが、完全に収入ゼロにしなくてよいため、生活費の足しになるという声もあります。
学費・費用の目安
| 国公立の養成所 | 年間50〜70万円程度(入学金含む) |
| 私立の養成所 | 年間80〜120万円程度 |
| 生活費(1年間) | 120〜180万円(地域・生活スタイルによる) |
入学前に「最低1年分の生活費+学費」を確保しておくことが理想です。
奨学金制度(日本学生支援機構など)や、自治体の保健師奨学金制度を利用できる場合もあります。
入試対策
養成所の入試は「小論文+面接」が主流です。筆記試験(一般常識・専門科目)を課す学校もあります。
社会人経験をアピールできる面接対策と、公衆衛生や地域医療への関心を示す小論文準備が重要です。
ルート②:看護系大学への編入・大学院進学
3年次編入という選択肢
看護師免許を持っている場合、看護系大学の3年次に編入し、保健師養成課程を2年間で履修する方法があります。卒業時に保健師国家試験の受験資格が得られます。
養成所と比べると期間は2年間になりますが、「大卒」の学歴が得られること、研究や論文執筆を通じて専門性を高められることがメリットです。
大学院(公衆衛生学)というルート
近年、公衆衛生大学院(専門職大学院)で保健師資格を取得するルートも注目されています。
修士号(公衆衛生学)を取得しながら保健師免許が得られるため、管理職・研究職を目指す方には有力な選択肢です。
ただし学費は2年間で200万円以上になるケースも多く、費用と時間の投資が大きい点は考慮が必要です。
こんな人に向いている
- 学歴・修士号を取得してキャリアをステップアップしたい
- 将来的に保健師の管理職や政策立案に関わりたい
- 研究・学術活動に興味がある
- 学費・時間の投資を惜しまず、長期的なリターンを見据えている
ルート③:すでに保健師免許がある→転職で実現(最も現実的)
これが最もスムーズで、かつ「働きながら保健師になる」を実現できる唯一のルートです。
新卒看護師として保健師養成課程が組み込まれた大学を卒業し、看護師として就職したものの、保健師免許をまだ活かせていない方は少なくありません。
免許保有者が転職で保健師になるステップ
転職エージェントを使うことで、一般公開されていない非公開求人(産業保健師・行政保健師)にアクセスできるメリットがあります。
現時点で働いている人は、退職日との調整をしましょう。面接の際に相談をするか、もしくはエージェント経由で連絡するとスムーズです。
保健師転職に特化したエージェントの選び方は、【2026年最新】産業保健師転職サイトおすすめ6選で詳しく解説しています。

私自身は大学病院で看護師として働いたあと、一時ニート期間を経て産業保健師へ転職しました。当時は保健師求人に特化したエージェントを活用し、約9カ月間の転職活動を経て内定を獲得。「保健師免許は持っているのに活かせていない」という状態から抜け出したのがこのルートです。今では転職支援を通じて60名以上の保健師内定をサポートしてきましたが、最も多いのがこのルート③のケースです。
転職活動の詳細な経緯は、こちらの体験談記事で読めます。

「働きながら」保健師を目指せる現実的なパターン
完全にフルタイムで働きながら保健師資格を取得するのは難しいと解説しました。ただし、以下のパターンなら「仕事をしながら」に近い形で進めることができます。
夜勤専従・パートに切り替えて養成所へ通う
日勤のフルタイム勤務を辞め、夜勤専従バイトや週末のみのパート勤務に切り替えることで、平日日中に養成所へ通いやすくなります。
収入は大幅に減りますが、完全なゼロにはならない点がメリットです。
月10〜15万円程度の収入を確保しながら通学しているケースもあります。体力的には厳しいですが、生活費の一部を補えるため、貯金の取り崩しを減らせます。
職場の休職・教育支援制度を活用する
勤務先によっては、資格取得のための「教育休職制度」や「奨学金制度」が整備されている場合があります。
特に大学病院や大規模な医療機関では、こうした制度が設けられているケースがあります。
制度を利用できれば、職場籍を維持しながら1年間養成所に通い、取得後に戻る、または保健師職への異動が叶う場合もあります。
まずは職場の人事・看護部に確認してみることをおすすめします。
免許取得済みなら転職活動は働きながら可能
繰り返しになりますが、すでに保健師免許を持っている方は今の職場を続けながら転職活動ができます。
転職活動中に特別なコストも発生しません。
転職エージェントへの登録は無料で、企業保健師・行政保健師など幅広い求人から自分に合った職場を見つけることができます。
未経験から産業保健師を目指す具体的なステップは、以下の記事で解説しています。

保健師養成所・学校の選び方【費用・立地・合格率】
ルート①を選ぶ場合、養成所選びが合格後の転職にも影響します。以下のポイントで比較・検討しましょう。
国公立 vs 私立:費用の差は大きい
国公立の養成所は年間学費が50〜70万円程度と比較的安価です。一方、私立は80〜120万円程度かかる場合があります。
合計の生活費も含めると、国公立と私立で総費用に50万円以上の差が出ることもあります。入学倍率は国公立の方が高い傾向にあるため、早めの対策が必要です。
社会人入学者の割合を確認する
養成所によって、新卒(看護学校卒業直後)が多いところと、社会人・看護師経験者が多いところがあります。
社会人比率が高い学校は、講義のスケジュールや雰囲気が社会人向けに配慮されていることが多く、馴染みやすいといわれています。
オープンキャンパスや学校説明会に参加して、在校生の雰囲気を確認することをおすすめします。
国家試験の合格率
保健師国家試験の全国平均合格率は例年90〜95%程度です。ただし学校によって合格率にばらつきがあります。
志望校のウェブサイトや入試説明会で合格率を必ず確認しましょう。
立地・通学しやすさ
養成所は全国に約40校ありますが、地域によって選択肢の数に差があります。
特に地方在住の場合、引っ越しが必要になるケースもあります。家賃・交通費なども含めてトータルコストで比較することが大切です。
保健師取得後のキャリア選択肢
保健師免許を取得すると、大きく分けて3つの職場で働くことができます。
それぞれの特徴を把握して、自分に合ったキャリアを描いてみましょう。
産業保健師(企業):看護師からの転職者に人気No.1
企業(一般企業・製造業・IT企業など)で働く保健師です。社員の健康管理、ストレスチェック、健康診断の事後指導などを担当します。
最大のメリットは「夜勤なし・土日祝休み・残業少なめ」という働き方です。
年収は400〜600万円台が多く、福利厚生が充実している企業も多いため、看護師からの転職者に最も人気があります。
未経験・保健師経験なしでも転職できるケースがある点も魅力です。
産業保健師の面接対策や転職の進め方は産業保健師の面接でよく聞かれた質問まとめ&逆質問のコツをご覧ください。
行政保健師(公務員):安定した待遇が魅力
都道府県・市町村の保健所・保健センターで働く保健師です。地域住民の健康増進、母子保健、精神保健、感染症対策など幅広い業務を担当します。
公務員としての雇用安定・充実した退職金が魅力ですが、採用は年1回の公務員試験を経る必要があります。
試験科目は一般教養+保健師専門科目が多く、計画的な試験対策が必要です。
行政保健師の公務員試験対策については、こちらの記事 看護師から行政保健師へ転職!公務員試験対策の流れとおすすめ参考書が参考になります。
学校保健師・病院保健師
学校(主に大学・高校)に配属される学校保健師や、病院内の健康管理室で働く保健師もいます。
求人数は産業・行政と比べて少なめですが、教育に関心のある方や、医療機関から離れたくない方に選ばれることが多いです。
よくある質問(FAQ)
まとめ|自分に合ったルートを選ぼう
看護師が保健師になる方法を3つのルートで解説しました。最後に要点を整理します。
・完全に働きながらの免許取得は難しいが、準備次第で最短1年での取得は可能
・最短で最安はルート①「1年制保健師養成所」。費用は学費+生活費で150〜250万円程度
・学歴や専門性を高めたい場合はルート②「大学編入・大学院」
・すでに保健師免許を持っているなら、今すぐルート③の転職活動を始めるのが最善
まずはどのルートが自分に合っているか、現状を整理することが第一歩です。
筆者のサイト「ナーシスト」では、産業保健師への転職支援・行政保健師の試験対策など、保健師キャリアに関する情報を多数発信しています。
まずはどのエージェントに登録すべきか迷っている方は、下記の保健師転職に特化したエージェントの比較記事からご確認ください。


