「退職したいけど、何から始めたらいいか分からない…」
看護師として働くなかで、転職・結婚・育児・キャリアアップなど、さまざまな理由で退職を考えることがあります。
しかし、退職は申し出るだけでなく、多くの手続きや準備が必要です。やることを把握しないまま動いてしまうと、トラブルや損失につながるケースもあります。
この記事では、看護師が退職前にやるべきことをチェックリスト形式で網羅的にまとめました。
「退職の意思表示」から「最終出勤日」「退職後の手続き」まで、時系列に沿って解説します。ぜひ参考にしてください。
1. 退職を決めたらまず確認すること
退職に向けて動き出す前に、まず就業規則と自分の契約内容を確認しましょう。ここを飛ばすと、後になって「こんなルールがあったのか」と慌てることになります。
【就業規則の確認ポイント】
| 確認事項 | 理由 |
|---|---|
| 退職申し出の期限 | 病院によっては「3ヵ月前」「6ヵ月前」と定めているケースがある |
| 有給休暇の残日数 | 退職前に計画的に消化するために必要 |
| 退職金の有無と条件 | 勤続年数や退職理由(自己都合・会社都合)によって変わる |
| 競業避止義務の有無 | 転職先や開業に制限がかかる場合がある |
| 離職票・源泉徴収票の発行 | 次の職場や失業給付の手続きに必要 |
民法では「退職の意思表示から2週間で退職できる」とされていますが、就業規則には従うのが円満退職への近道です。
どうしても折り合いがつかない場合は、後述のトラブル対処法を参照してください。
2. 退職の3〜6ヵ月前にやること
退職時期・退職理由を整理する
退職を決意したら、まずいつ辞めるかを明確にしましょう。退職日の設定は、以下を考慮して決めます。
- 転職活動の見通し(内定までの平均期間は1〜2ヵ月)
- 有給休暇の残日数(最終出勤日から逆算して取得できるように)
- 年度切り替えのタイミング(3月末・9月末などは引き継ぎが比較的スムーズ)
- 賞与(ボーナス)の支給日(支給後に退職するだけで数十万円変わる場合も)
転職活動を始める(転職先を決めてから辞める場合)
「辞めてから探す」より、「決めてから辞める」ほうが経済的・精神的に安定します。
・看護師転職サイトへの登録
・希望条件の整理(診療科・勤務形態・地域・給与など)
・職務経歴書・履歴書の準備
関連記事: 看護師の転職サイト比較・おすすめランキング / 看護師の職務経歴書の書き方
上司(師長・部長)への退職の意思表示
退職の意思は、直属の上司(病棟師長など)に最初に伝えるのがマナーです。
同僚や他の部署への報告は、上司に伝えた後が鉄則。
伝えるタイミング
- 業務が落ち着いている時間帯(朝の申し送り後、残業が少ない時間帯など)
- 個室や静かな場所で、1対1で話す
伝える内容
- 退職の意思と希望退職日
- 退職理由(詳細を話す必要はないが、前向きな言い方が無難)
詳しい内容は、看護師が退職を伝えるタイミングと切り出し方【円満退職のコツ】を読んでください。
退職理由の例(円満に伝えるコツ)
退職理由は、ネガティブな意見だけでなく、ポジティブな面も含めて伝えると伝わりやすいです。
| 本音の理由 | 伝え方の例 |
|---|---|
| 人間関係がつらい | 「自分の強みを活かせる環境で再出発したい」 |
| 給与が低い | 「キャリアアップのために新しい環境に挑戦したい」 |
| 夜勤がきつい | 「ライフスタイルの変化に合わせた働き方を見直したい」 |
3. 退職の1〜2ヵ月前にやること
退職届・退職願の提出
上司との話し合いが済んだら、正式に退職届または退職願を提出します。
退職願と退職届の違い
| 退職願 | 退職届 | |
|---|---|---|
| 意味 | 退職をお願いする書類(撤回可能) | 退職を一方的に通知する書類(撤回不可) |
| 使うタイミング | 退職交渉中 | 退職日が確定してから |
書き方のポイント
- 縦書き・白封筒・黒いペンで手書きが基本
- 退職理由は「一身上の都合により」でOK(詳細を書く必要なし)
- 提出先は直属の上司か、指示された担当者へ

職場に指定の退職届がある場合が多いです。一度事務または上司に確認をしましょう。
有給休暇の消化計画を立てる
看護師は有給が取りにくい職場も多いですが、退職前の有給消化は労働者の権利です。
有給消化のポイント
- 残日数を確認し、最終出勤日から逆算して申請する
- 「業務の引き継ぎが終わった後」に消化する形にすると上司も承諾しやすい
- 病院側が「有給の買い取り」に応じてくれる場合もある(義務ではないが相談の価値あり)
業務の引き継ぎ準備を始める
看護師にとって引き継ぎは患者さんへの最後の責任でもあります。
丁寧な引き継ぎは、自分自身の評判を守ることにもつながります。
- 担当患者・継続指示の申し送り
- 定期業務・ルーティン作業の手順書作成
- 自分が担当していた委員会・プロジェクトの引継ぎ
- 使っている備品・物品の場所の共有
- ロッカー・引き出しの私物整理
- 業務マニュアルの更新(必要であれば)
返却物・受け取るものをリストアップ
注意:離職票は退職後10日以内に届くのが目安ですが、遅れる場合は勤務先に確認しましょう。

離職票が送れると、失業保険を受ける場合の受け取り期間が伸びてしまいます。
同僚・スタッフへの報告と挨拶準備
上司への意思表示が済み、退職日が確定したら、同僚やお世話になった人たちへ順次報告します。
報告の順番(目安)
- 直属の上司(師長)
- 主任・チームリーダー
- 同じ部署の同僚・後輩
- 他部署でお世話になった人
- 医師・コメディカルスタッフ
挨拶のタイミングと手段
- 最終出勤日に口頭でご挨拶
- お菓子などの手土産(義務ではないが、感謝の気持ちを伝えるうえで有効)
- メッセージカードや挨拶状(特にお世話になった人へ)
最終日はお世話になった関係各所へ挨拶に行くのがマナーです。しかし、病院は忙しいので都合の良い時間を狙って挨拶に行きましょう。
私物・個人情報の整理
- デスク・ロッカー・更衣室の私物を少しずつ持ち帰る
- 個人のUSBや私物パソコンに院内データが入っていないか確認・削除
- 個人的に保存していた業務データ(手順メモなど)は情報漏えいにならないよう適切に処理
5. 最終出勤日にやること
最終日の流れチェックリスト
- 返却物をすべて揃えて提出する
- ロッカー・デスクの私物をすべて持ち帰る
- 担当業務の最終引き継ぎを行う
- 各所への挨拶まわり(部署・師長・事務・医師など)
- お礼の言葉と手土産を渡す
- 「受け取るもの」でまだもらっていないものを確認・催促
退職日の書類を確認する
最終出勤日、または郵送で届く書類を確認します。
- 退職証明書:次の会社が求める場合に提出(発行を申請する必要あり)
- 雇用保険被保険者証:次の雇用保険加入手続きに必要
- 離職票:失業給付を申請する場合に必要(退職後10日以内が目安)
- 源泉徴収票:年末調整・確定申告に必要(1月末までに発行義務あり)
6. 退職後にやること(行政・保険・年金手続き)
退職後は、特に最初の2〜3週間に手続きが集中します。「後でやろう」と放置すると期限を超えてしまうものもあるため、退職日の翌週には動き始めるよう意識してください。
転職先が決まっている場合と、次の職場が未定な場合で手続きが異なります。
健康保険の手続き
【次の就職先が決まっている場合】
入職日から新しい職場の健康保険に加入するため、特別な手続きは不要です。
【次の就職先が未定(または入職まで間がある場合)】
以下の3つの選択肢があります。
| 選択肢 | 内容 | 向いている人 |
|---|---|---|
| 国民健康保険に加入 | 退職後14日以内に市区町村窓口で手続き | 次の就職まで長引く可能性がある人 |
| 任意継続被保険者 | 退職後20日以内に申請・最大2年間継続 | 前職の保険料が国保より安い場合 |
| 家族の扶養に入る | 収入見込みが年130万円未満が条件 | 配偶者・親が社会保険加入者の場合 |

短期間の場合は、任意継続が楽でおすすめです!
年金の手続き
- 次の就職先あり(厚生年金に加入): 職場が手続きしてくれるため、自分では不要
- 次の就職先なし・期間が空く: 国民年金への切り替えが必要(退職後14日以内に市区町村で手続き)
注意:未納のままにすると将来の受給額が減ることがあります。保険料免除制度や猶予制度を活用しましょう。
失業給付(雇用保険)の手続き
転職先が決まっていない場合、雇用保険の「基本手当(失業給付)」を申請できます。
手続きの流れは以下の4ステップです。
自己都合退職の場合、給付期間が以下のように決められています。
| 被保険者期間 | 給付日数 |
|---|---|
| 1年以上10年未満 | 90日 |
| 10年以上20年未満 | 120日 |
| 20年以上 | 150日 |
自己都合退職の場合、申請から給付まで約1ヵ月の「給付制限期間」があります。転職先が決まっている場合は申請不要です。

詳細はハローワークで確認をしましょう。
住民税の手続き
住民税は前年の収入に対して翌年6月〜翌翌年5月に課税されます。
- 会社員時代: 給与から天引き(特別徴収)
- 退職後: 自分で納付(普通徴収)に切り替わる
退職時に「最後の給与から一括天引き」か「普通徴収に切り替え」かを選択できます。
転職先が決まっている場合は新しい職場に引き継いでもらえます。
確定申告の確認
以下の場合は、翌年2月〜3月に確定申告が必要になります。
- 年の途中で退職し、年末調整を受けていない
- 退職後に副業収入があった
- 医療費控除などを受けたい

お金のリテラシーを高めるチャンスとして一度自分で調べてみると、将来に役立ちます!
7. 退職前チェックリスト一覧表
以下にすべての手続きをまとめたチェックリストを用意しました。印刷してご活用ください。
【退職前】やることチェックリスト
3〜6ヵ月前
- 就業規則の確認(申し出期限・退職金・有給日数)
- 退職日・退職理由の整理
- 転職活動の開始(転職先を決めてから辞める場合)
- 直属の上司への退職の意思表示
1〜2ヵ月前
- 退職届・退職願の提出
- 有給休暇の消化計画の申請
- 引き継ぎ書類・手順書の作成
- 担当業務の後任者の確認
- 返却物・受け取るものの確認
2週間〜1ヵ月前
- 同僚・スタッフへの報告
- 挨拶まわりのタイミングと内容の確認
- 私物の整理・持ち帰り
- 個人情報・院内データの削除確認
【最終出勤日】やることチェックリスト
- 返却物をすべて提出(職員証・鍵・制服など)
- 最終引き継ぎの実施
- 各所への挨拶まわり
- 書類の受け取り確認(雇用保険被保険者証・退職証明書など)
【退職後】やることチェックリスト
- 健康保険の手続き(国保加入 or 任意継続 or 扶養)
- 国民年金への切り替え(必要な場合)
- 失業給付の申請(ハローワークへ)
- 住民税の支払い確認
- 源泉徴収票の受け取り
- 確定申告の要否確認
8. 退職時によくあるトラブルと対処法
「引き止め」がしつこい
人手不足の医療現場では、退職を申し出ても引き止められることが珍しくありません。
- 「考え直してほしい」と言われても、感謝しつつも意思は明確に伝える
- 引き止めに応じてしまうと、ずるずると辞めにくくなる
- どうしても応じてもらえない場合は「退職代行サービス」の利用も選択肢のひとつ
有給休暇を消化させてもらえない
「人がいない」「迷惑がかかる」と言われて有給取得を拒否されることも。
- 有給取得は労働者の権利であり、会社は原則として拒否できない(時季変更権はあるが、退職前は行使できない)
- 書面で申請し、拒否された場合は記録を残す
- 労働基準監督署への相談も可能
退職書類を発行してもらえない
離職票や源泉徴収票が届かない、退職証明書を出してもらえないケース。
- 退職後10日経過しても離職票が届かなければ、ハローワークに相談する
- 源泉徴収票は退職後1ヵ月以内の発行が義務(遅れる場合は税務署に相談可)
- 内容証明郵便で発行を請求するのも有効
トラブル④ 退職日まで居づらい雰囲気になる
退職を申し出た後、職場で孤立したり、態度を変えられることも。
- 業務は最後まで丁寧に行い、引き継ぎに誠実に取り組む
- 感情的にならず、プロとして最後まで務めることが最大の返答
- 退職日まで短期間であることを意識して乗り切る
9. 円満退職のためのポイント
できるだけ早めに意思表示をする
ギリギリで申し出ると病院側への負担が大きく、トラブルの原因に。3ヵ月前が理想、最低でも1〜2ヵ月前には伝えましょう。
退職理由はシンプルに・前向きに
「一身上の都合」で十分ですが、聞かれた場合はネガティブな言い方を避け、「スキルアップ」「家庭の事情」など前向きなニュアンスで伝えましょう。
引き継ぎは丁寧に・文書で残す
口頭だけでなく、手順書・引き継ぎ書を作成しておくと「あの人がいなくなってから困った」を防げます。職場への最後の貢献です。
最後まで誠実に仕事をする
退職が決まってからも、患者さんへのケア・業務の質を落とさない。最後の姿が一番記憶に残ります。
感謝の気持ちを伝える
どんな職場でも学びはあったはず。感謝の言葉を忘れずに。業界は意外と狭く、どこかで再会することもあります。
まとめ|看護師が退職前にやること・準備チェックリスト
看護師が退職する際には、意思表示→書類提出→引き継ぎ→各種手続きと、多くのステップがあります。時系列を押さえてひとつひとつこなせば、焦らず円満に退職できます。
- 退職の意思表示は3ヵ月前が理想
- 有給消化・退職届・引き継ぎは並行して計画する
- 退職後は14日以内に健康保険・年金の手続きを忘れずに
- トラブルが起きたら労基署・ハローワークに相談できる
退職はゴールではなく、新しいスタートへの準備です。しっかり準備して、次のステージに進んでください。

