「新卒で産業保健師になりたいんですけど、本当に可能ですか?」
これ、私が今までのキャリア相談で一番よく聞かれた質問のひとつなんですよね。正直、私自身も看護師を数年経験してから産業保健師に転職した身なので、最初にこの質問をされたときは「新卒でなれるの?」と半信半疑でした。
でも実際に、社会人1年目から産業保健師として働いている方がいます。今回インタビューさせていただいたのは、大学卒業後すぐに産業保健師として就職した「ちゃんひなさん」です。
新卒で産業保健師になる人はかなり少なく、求人の大半は産業医科大学経由。他大学の学生が求人を見つけるのは、正直かなり難しいのが現実です。
あなたも「求人がどこにあるのかわからない」「新卒じゃ無理なんじゃないか」と感じたことはありませんか?
今回は、ちゃんひなさんがどうやって求人を見つけたのか、どんな試験を受けたのか、そして実際に働いてみてどうだったのかを、包み隠さず話してもらいました。
産業保健師を目指している学生さんにとって、きっと参考になる内容だと思います。

産業保健師に新卒でなるには?就活の実態

「そもそも新卒で産業保健師になるって、どうやって動けばいいの?」
ここが一番気になるところだと思うので、ちゃんひなさんの就活の流れを時系列で聞いてみました。
就職先を決めるまでの心境の変化から、実際の求人の見つけ方まで、詳しくお話ししてもらえたので順番に紹介していきます。
産業保健師を目指したきっかけ
ちゃんひなさんが看護師を志したきっかけは、祖母が癌を患ったときに支えてくれた看護師の姿だったそうです。人に寄り添える看護師になりたい、という思いからのスタートでした。
ただ、実習で産業保健の現場に触れたことで気持ちが変わっていきます。
治療はもちろん大切だけど、保健師のように予防的な視点で関われる仕事に惹かれたそうなんですよね。労働者と対等な立場で健康増進や疾患予防に働きかけられる、というところに魅力を感じたと話してくれました。
正直な気持ちも聞いてみると、こんな本音も出てきました。
・夜勤をやりたくなかった
・QOLを高めたかった
・実習で自立度の高い患者さんばかり担当し、看護師として働く自信が持てなかった
・医療行為そのものに自信がなかった
きれいごとだけじゃなく、こういう本音を話してくれるところが、すごく信頼できるなと私は感じました。
いつから産業保健師を目指し始めた?
「いつから」とハッキリ決めていたわけではなかったそうです。看護師を3年くらい経験して、もし就職先があれば産業保健の道に進みたい、という漠然とした思いはずっと持っていたとのこと。
転機になったのは大学4年の夏。大学の教授経由で新卒保健師の募集があり、チャンスだと思ってエントリーシートを出したそうです。
すでに病院からの内定はもらっていたものの、企業への就職、つまり産業保健師の道を選んだと話してくれました。

迷いがなかったわけじゃないと思いますが、その決断力、私は素直にすごいなと思います。
新卒 産業保健師の求人の探し方
新卒の産業保健師求人って、正直どこを探せばいいのかわからない、という声をよく聞きます。ちゃんひなさんの場合も、求人は大学の教授経由で届いたそうです。

新卒求人は世に出回らないことがほとんどなので、学校の先生に伝手がないか聞いてみるのはおすすめの方法です。
転職サイトにはあまり求人が出ていませんが、まれに業務委託会社が募集を出していることもあるので、チェックしてみてください。
内定までのスケジュールと試験内容
内定までの流れは、以下のようなスケジュールだったそうです。
| 8月 | 新卒保健師の募集開始 エントリーシート提出 |
| 9月 | 一次選考(リモート面接) 筆記試験(計算計数力、読解力) グループ面接(コロナの影響で中止) 二次面接(対面) |
| 10月 | 内定連絡 |
看護師の就活より長期戦になるので、早めに動き出すのがポイントだと思います。
面接で何を聞かれるのか、事前に知っておきたい方は産業保健師の面接で実際によく聞かれた質問まとめも参考にしてください。
筆記試験が含まれることもあり、行政保健師の試験対策がそのままカバーできる範囲なので、あわせて対策しておくと安心です。

新卒で産業保健師の求人を見つけるのが難しい理由
「探しても探しても求人が出てこない」という声、本当によく聞くんですよね。実はこれ、あなたの探し方が悪いわけじゃないんです。
なぜ新卒求人がこんなに少ないのか
新卒の産業保健師求人は、産業医科大学経由がほとんどというのが実情です。他大学の学生が正規のルートで求人にたどり着くのは、正直かなり難しいと言わざるを得ません。
理由はシンプルで、企業側が即戦力を求めるケースが多いからなんですよね。
産業保健師は一人職場や少人数体制の企業も多く、教育コストをかけて新卒を育てる余裕がない、という事情もあります。だからこそ、大学経由の限られたパイプラインに求人が集中してしまうわけです。

私自身、転職支援をしていて感じるのですが、「探す場所を知らないだけ」で諦めてしまう学生さんが本当に多いんです。もったいないなと思います。
求人を見つけるための具体的な行動
ちゃんひなさんのケースでも、求人は大学の教授経由で届いています。とはいえ、待っているだけでは情報は入ってきません。実際に動くとしたら、こんな方法があります。
・大学の教授やキャリアセンターに新卒産業保健師求人の有無を直接相談してみる
・産業保健師を紹介している業務委託会社の求人情報を定期的にチェックする
・転職サイトでも、まれに新卒可の求人が出ることがあるので登録だけでもしておく
・OBやOGで産業保健師として働いている先輩がいないか探してみる
待つより聞きに行く、この一歩がかなり大きいと思います。私も相談を受けるたびに、「まずは動いてみて」と伝えるようにしています。
産業保健師向けの転職サイトを知りたい方はこちらにまとめています。
新卒産業保健師として働いてみたリアルな声

就活を乗り越えていざ入社しても、そこからが本番ですよね。実際に働き始めてから、ちゃんひなさんが感じた「大変だったこと」と「良かったこと」を、それぞれ聞いてみました。
新卒入社で大変だったこと
社会人のマナーを覚えること
会社の一員として働くうえで、まず苦労したのが社会人マナーだったそうです。看護の実習とは全く違う世界で、慣れるまでかなり時間がかかったと話してくれました。
具体的には、こんなことを一つずつ覚えていく必要があったそうです。
・名刺交換の仕方
・失礼のないメールの送り方
・電話対応の仕方
・会社の規則や制度について
産業保健師のインターンがあるのかもわからないまま、会社のインターンにも参加していなかったので、いきなり本番、という状態だったんですよね。
あなたも新しい環境に飛び込むとき、こういう戸惑いを感じたことはありませんか?
知識不足との向き合い方
看護師としての実務経験がないため、とにかく知識が足りない、というのが正直なところだったそうです。夏頃から受け持ちの従業員を持ち始め、健診データを見て保健指導ができるように、本やチラシを読みながら頭に叩き込む日々だったと話してくれました。
1年間で実施する業務スケジュールはある程度決まっているものの、初めの1年は全ての業務がわからない状態。同じ職場に先輩保健師が数人いたので、分からないことはとにかく質問しながら進めていったそうです。
1年間の業務としては、主にこんな内容があったとのことです。
- 定期健診後の保健指導
- 転勤してきた方への面接
- ストレスチェックの面接
「一人で工夫して自由にやる」という感じではなく、先輩を真似て吸収することを意識していたそうです。
企業によって保健師の活動は本当に様々なので、面接の段階でどんな業務があるか聞いておけると、入社後のイメージがつきやすいかもしれません。
新卒保健師で良かったこと
大変なことばかりではなく、新卒だからこそのメリットもあったそうです。
まず挙げてくれたのが、従業員から「若いね〜」と声をかけてもらい、可愛がられることだったそうです。あとは外部の研修に参加させてもらえること。
看護師の実務経験も知識もない、まっさらな状態だからこそ、素直に学べる環境だったと話してくれました。

同じ年度に入社した一般社員との同期もでき、その存在が心の支えになっているそうです。
これから30年近く続く会社生活の中で、同期は一生の宝だと思っている、という言葉が印象的でした。中途採用で途中から入社していたら味わえない経験だと思います。
私も転職者としてキャリアをスタートしたので、正直、こういう「同期」との時間はちょっと羨ましいなと感じました。
知識ゼロからのスタートで悩んでいる方は未経験でも産業保健師になれた【9ヶ月間の転職経験談】も参考になります。
これから新卒で産業保健師を目指す人に一言

最後に、これから産業保健師を目指す学生さんに向けて、ちゃんひなさんからのメッセージを紹介します。
産業保健師の仕事の魅力
看護師の仕事は、患者さんとの一期一会の出会いがほとんどです。でも産業保健師は、従業員を長期の目で見て関わり続けられる仕事なんですよね。
年数を重ねるごとに従業員との仲も深まっていき、信頼関係を築いていけるところが大きな魅力だと話してくれました。

産業保健師は、従業員という同じ会社の仲間、いわば「身内」を相手に接することができるので、とても働きやすいそうです。
これ、患者さんと医療者という関係とは全く違う距離感なんですよね。あなたも「長く関わり続けられる仕事がしたい」と思ったことはありませんか?
働き方のメリット
勤務体制についても、率直な感想を聞くことができました。
・土日祝休みで夜勤なし
・生活リズムが整い、QOLが確保される
・急に休みたいときも、代わりの出勤者を探す必要がない
・会社によっては産休・育休制度が整っている
・福利厚生を活かして家庭との両立がしやすい
「オススメなお仕事です」とちゃんひなさんは笑顔で話してくれました。
就活は大変だと思いますが、皆さんの努力はいつか実を結ぶはずです。頑張ってください、という言葉で締めくくってくれました。
まとめ|産業保健師に新卒でなるためのポイント
ここまで、ちゃんひなさんへのインタビューを通して、新卒で産業保健師になるまでの流れと、働いてみてわかったリアルな声をお届けしてきました。
新卒産業保健師は、求人があれば運が良いと言えるくらい希少な存在です。それでもタイミングさえ合えば、決して手が届かない道ではないと私は感じました。
今回の内容を振り返ると、ポイントはこんな感じです。
・求人は8月頃に出ることが多い
・大学の教授経由で求人を見つけられた
・会社員としてのマナーは入社後に必死で覚えるもの
・知識不足は先輩に質問しながら自分で補っていく
・従業員と長期的に、同じ目線で関わっていける仕事
・土日祝休み・夜勤なし・QOLが整いやすい働き方
正直、私も最初は「新卒で産業保健師なんて狭き門すぎるのでは」と思っていました。でも実際に道を切り拓いた方の話を聞くと、諦める前にやれることはまだまだあるんだな、と感じさせられます。
産業保健師を目指している学生さんは、ぜひ大学の先生への相談や、業務委託会社の求人チェックから始めてみてください。あなたのタイミングで、良い出会いがありますように。

