近年、企業ではメンタルヘルスの件数が急増しており、休職・退職に追い込まれる従業員が増加しています。
社会復帰できないままの状態が続く一方で、企業は人材不足に悩まされています。
この悪循環を断ち切るために、保健師の活動が注目され、保健師を配置する企業が増えています。
しかし、保健師も正解がない対応に悩まされる人が続出し、メンタル対応が多い企業は避けられる傾向にあります。
多くの人が苦手に感じるメンタルヘルスの対応のコツを解説します。後半でアプローチ方法や実際に現場で使える具体例を紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
メンタルヘルスケアの基本的な考え方

事業者は、ストレスチェック制度を含めた事業場におけるメンタルヘルスケアを積極的に推進し、「心の健康づくり計画」 やストレスチェック制度の実施方法等に関する規程を策定する必要があります。
メンタルヘルスケアの実施にあたり、ストレスチェック制度の活用や職場環境等の改善を通じて、以下のことを行います。
「一次予防」メンタルヘルス不調を未然に防止する
「二次予防」メンタルヘルス不調を早期に発見し、適切な措置を行う
「三次予防」メンタルヘルス不調となった労働者の職場復帰支援を行う
上記3つが円滑行われるように業務を行います。
押さえておきたいメンタルヘルス対策の法的根拠

・労働安全衛生法
産業保健活動の大半は、労働安全衛生法を法的背景としています。産業医や産業看護職などの産業保健スタッフは、事業者に代わって産業保健活動をしているということになります。
・メンタルヘルス指針「労働者の心の健康の保持増進のための指針」
メンタルヘルス指針は、「労働安全衛生法(第70条の2第1項の規定)に基づき、同法第69条第1項*の措置の適切かつ有効な実施を図るための指針として、事業場において事業者が講ずる労働者の心の健康の保持増進のための措置が適切かつ有効に実施されるよう、メンタルヘルスケアの原則的な実施方法について定めるもの」とされています。
*第69条第1項
「労働者に対する健康教育及び健康相談その他労働者の健康の保持増進を図るため必要な措置を継続的かつ計画的に講ずる」こと。
➡つまり、メンタルヘルス指針の内容に沿った対策を行うことが事業者の努力義務となっています。
>>参考:厚生労働省(職場における心の健康づくり)
・健康保持増進指針
健康保持増進指針とは、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」のことです。
ここでのメンタルヘルスケアは、「積極的な健康づくりを目指す人を対象にしたものであって、その内容は、ストレスに対する気付きへの援助、リラクセーションの指導等」です。
その実施にあたっては、メンタルヘルス指針を踏まえて、労働者の状況に応じて適切に行われる必要があるとされています。
・ストレスチェック制度
ストレスチェックとは、条文では「心理的負担の程度を把握する検査」となっています。(第60条の9)
【目的】メンタルヘルス不調の第一次予防
メンタルヘルス不調とは(メンタルヘルス指針による定義)
精神及び行動の障害に分類される精神障害及び自殺のみならず、ストレス、強い悩みおよび不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むものをいいます。
ストレスチェックの実施は事業者の義務となっています。
具体的な実施方法については、「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル(ストレスチェックマニュアル)」にまとめられています。
4 つのメンタルヘルスケアの推進

セルフケア
労働者に対して、セルフケアが行えるように教育研修、情報提供を行います。
・ストレスやメンタルヘルスに対する正しい理解
・ストレスチェックなどを活用したストレスへの気付き
・ストレスへの対処法
主に従業員全体に向けたポピュレーションアプローチを行います。新人から管理職までを対象とするため、基本的な知識を中心にわかりやすく、簡潔に情報提供をします。
ラインによるケア
職場環境を大きく変えるにはライン*によるケアが効果的です。パワハラ文化のある部署はトップダウン(上司から部下へ指示すること)を行うことで、劇的な変化が得られ、大変期待ができます。
*ラインとは:所長・課長・所属長など管理職にあたるものをいいます。
・職場環境等の把握と改善
・労働者からの相談対応
・職場復帰における支援(業務内容や勤務時間調整など)
ラインケアを行うことで、従業員の小さな変化に気づいた管理職が産業保健師へ相談し、メンタル予防に繋がったという事例は多々あります。
メンタルヘルスは、自分自身がうつになっているという自覚がないまま重症化することがあり、周囲がはやめに気づき、保健師へ繋げて対応をすることで予防ができるので、職場全体で取り組むことが特に重要です。
ラインケアでは、テキストを管理職に配布し、メンタルヘルスマネジメント検定を受けさせる企業もあります。
>>参考:安全衛生教科書 メンタルヘルス・マネジメント(R)検定2種・3種 テキスト&問題集 第2版 (EXAMPRESS) [ 一般社団法人EAPコンサルティング普及協会 ]事業場内産業保健スタッフ等によるケア
事業場内産業保健スタッフ等は、セルフケア及びラインによるケアが効果的に実施されるよう、労働者及び管理監督者に対する支援を行うことが大切です。
以下のように心の健康づくり計画を実施する際に、保健師は中心的な役割を担うことになります。
・具体的なメンタルヘルスケアの実施に関する企画立案
・個人の健康情報の取扱い
・事業場外資源とのネットワークの形成やその窓口
・職場復帰における支援、など
事業場外資源によるケア
メンタルヘルスは産業保健師のみが対応するのではなく、外部の専門スタッフに依頼することもあります。
特にパワハラ・セクハラなどは職場内の人間の耳に入ると余計に人間関係が悪化することがあります。
そのため、相談しやすい事業場外で利用できる資源があることも極めて重要です。
相談先の選択肢がいくつかあると相談者にとってもメリットになります。
・情報提供や助言を受けるなど、サービスの活用
・ネットワークの形成
・職場復帰における支援
メンタルヘルス啓発活動に使えるタイトル24選
メンタルヘルスは、個別相談の対応をしていても年々増えるばかりです。
大きくメンタルヘルスの件数を減らすためには「ポピュレーションアプローチ」が欠かせません。
「弱音=ダメ」や「我慢が美徳」といった固定概念に配慮しつつ、共感や納得を得られるような言葉選びが重要です。
今回は社内報や啓発ポスターに使えるタイトルを20個紹介します。会社の雰囲気に合わせてぜひ使ってみてください。
- 心の元気、足りてますか?
- 今日も、おつかれさま。自分にも「やさしさ」を。
- がんばりすぎていませんか?
- こころの健康が、いい仕事をつくる。
- そのサイン、見逃していませんか?
- 「大丈夫」と言いながら、つらくないですか?
- 誰かの笑顔の裏に、助けが必要かも。
- その不調、心からのSOSかもしれません
- ひとりで抱え込まないで
- 「ちょっと話してみようかな」から始まるケア
- 話すことで、こころは軽くなる
- 相談は、弱さじゃない。行動する強さです。
いかがでしょうか?このように、ただわかりやすいタイトルをつけるだけでなく、心に響くよう工夫することで上手にアプローチすることができます。
さらに、男性向けのタイトル参考例も紹介するので、男性従業員が多い職場で使ってみてください。
- ハードワークの前に、ハートケア
- 気力だけじゃ、走りきれない
- メンタルも「仕事のうち」
- 体調管理はできてる。じゃあ、心は?
- パフォーマンスの鍵は、心の安定
- 心のコンディションも、見える化しよう
- 「限界」は、無理してからじゃ遅い
- 折れないために、休むという選択
- 強さとは、頼ることを知っていること
- 無理をやめるのは、前に進むため
- かっこよさは、「ちゃんと休む」にもある
- 一人で耐える時代は、もう終わった
【まとめ】産業保健師のメンタルヘルスケア
メンタルヘルスケアは今では大きな社会問題となり、企業からも注目されている業務です。
産業保健師のみが対策をするのではなく、職場全体・産業保健スタッフ全体で取り組むことが重要です。
ぜひ今後の保健活動に役立ててくださいね。



