保健師をしていると、特定保健指導の実施率を上げるようにと健保からうるさく言われることってありませんか?
個人の重症化予防のためでもありますが、特定保健指導の実施率が低いと健保にペナルティが課せられ、従業員の保険料が上がる可能性があります。
・特定保健指導ってなんのためにやるの?
・どうして実施率にうるさいのか?
・特定保健指導を拒否される場合はどうしたらいいの?
このような疑問を解決できる記事になっています。今回は健保の目線から医療費について解説を含めてお伝えしています。
特定保健指導の目的は生活習慣病予備軍を減らすため
40歳から74歳までのすべての被保険者および被扶養者に対して、特定健康診査(特定健診)が実施されています。
特定健診では、内臓脂肪型肥満に着目し、その要因となっている生活習慣を改善するための保健指導を行い、メタボリックシンドロームや生活習慣病の有病者&予備群を減少させることを目的としています。
特定保健指導をやらなきゃいけない理由はお金が関係していた!
特定保健指導の実施率を上げろ、上げろとしつこく健保が言うのには保険料が上がるから。次の2つが主な原因になります。
①実施率が低いと国から罰金をとられるから
②生活習慣病患者が増えたり、重症化することで医療費が増大するから
①実施率が低いと国から罰金をとられるから
2018年度から厚生労働省は特定保健指導の受診率が低い健康保険組合に対して、財政的なペナルティ(罰金)を大幅に強化する見直しが行われました。
企業で健康保険組合を持っている場合・・・
単一健保の特定保健指導実施率55%以上でないとペナルティが課せられます。
※以下の表は第四期で変更になります。
大企業の健康保険組合では、罰金が数億円になるのだとか・・・
その一方で、健診の受診率や生活習慣病の重症化予防などで成果を上げた場合のインセンティブ(報奨)も強化されました。
面談中断者(退職・自己中断)は人数に含まれないので注意が必要です。
②生活習慣病患者が増えたり、重症化することで医療費が増大するから
特定保健指導を受けていないと、ほぼ無症状の高血圧、糖尿病、脂質異常症がどんどん進行していき、脳血管疾患や心疾患を引き起こすリスクが上がります。
疾患名 | 入院費 |
---|---|
脳梗塞 | 160万円 |
心筋梗塞 | 160万円 |
糖尿病 | 70万円 |
入院費だけでも高いですが、その後脳梗塞で麻痺になった場合のリハビリにかかる金額、フォロー受診、糖尿病であれば透析に年間450万円もプラスされることになります。
日本では自己負担が3割、高額療養費制度もありますが、健保の負担は7割なので非常に大きいです。さらに病気が重症化することで、医療費負担も増大し健保への請求も莫大になります。
①と②が重なることで健保としては莫大なお金がかかってしまい、保険料は上がるしかありません。特定保健指導は必ず行いましょう。
特定保健指導を拒否された場合の保健師の対応方法
特定保健指導をしなければいけませんが、「自分の体のことだからほっといて」「他人にどうこう言われたくない」と特定保健指導を拒否し続ける人もたくさんいます。
そのような人への関わり方のコツを紹介します。
①「保健指導」という呼び方から「面談」へ
「指導」という言葉は上から目線と捉えられやすく、人に指示されたくない!と嫌な気持ちになってしまいます。そのため、面談にさえも来てくれない、という方が多いです。
指導ではなく、健康についてのお話をする面談、というようにやさしい言葉を使うことをおすすめします。
②面談序盤は相手の心を読み取る
その人が健康に対してどう考えているのか?心の準備段階を知ることが大切です。そのためには、面談の序盤で以下のような質問をしてみましょう。
健診結果をみてどう思われましたか?
保健指導をきちんと受けてくれる人はほとんどいないと思ってください。きちんと聞いてくれる人は、自分で健康を維持できるので指導は不要です。
保健指導方法については、以前からおすすめしているミレイ先生の「アドラー流保健指導」がおすすめです。
保健師の質問力で保健指導を磨く
保健指導を実際にやってみると「相手の反応が薄く会話が続かない」「聞きたい事が聞き出せない」「質問攻めになってしまっている」など様々な困難に出会います。
質問の仕方を工夫するだけでも相手が積極的に話してくれたり、会話のキャッチボールも増えます。特定保健指導での面談力を高めたい人はこの一冊をおすすめします。
特定保健指導で実施率が低い時の対応まとめ
・特定保健指導は、 内臓脂肪型肥満に着目しメタボリックシンドロームや生活習慣病の有病者&予備群を減少させることが目的
・ 特定保健指導の実施率を上げないといけない理由は保険料が上がるから。
・実施率が低いと国からの罰金があり、重症化する人も増加するため保険料上昇につながる
・特定保健指導を拒否する人には、まず心の準備段階を知ること
今回は、特定保健指導がなぜ大事なのか?について解説しました。従業員の健康を守りつつ、保険料を抑えるためにも実施率向上を目指して頑張りましょう。