特定保健指導の案内を送ったら、「なんで拒否したら罰金取られるんですか?」と対象者の方から詰め寄られたことがあるんです。
正直、その場ではうまく答えられなくて、あとで自分でも法律や制度を調べ直しました。
「特定保健指導 拒否」で検索してこの記事にたどり着いたあなたも、もしかしたら似たような疑問を抱えているんじゃないでしょうか。断ったら本当にペナルティがあるのか、それとも健保の脅し文句なのか、正直よくわからないですよね。
私は産業保健師として、この案内を送る側・対応する側の両方を経験してきました。
この記事では、個人が拒否した場合に実際どうなるのか、そして健保側にどんな影響があるのかを、現場で見てきたことも交えてお伝えしていきます。あわせて、拒否され続けた時に保健師がどう関わっているかもお話しますね。
特定保健指導を拒否しても個人に罰則はない
結論から言うと、特定保健指導を拒否しても、個人に罰金や罰則が科されることはありません。「断ったら会社にバレて評価が下がるんじゃないか」と心配される方もいますが、そういう仕組みにはなっていないんですよね。
私が以前担当していた方も、まさに同じことを気にしていました。「拒否したら人事に報告されて査定に響くんですか?」と聞かれたので、「そこは別物ですよ」と説明したら、少しホッとした顔をされていたのを覚えています。
とはいえ、「じゃあずっと無視してもいい」と単純に考えるのは、ちょっと早いと思うんです。
今のところ個人への罰則制度はありませんが、今後の制度改正でインセンティブの対象から外れたり、保険料に差がつくような議論が出てくる可能性はあります。
現時点で決まっていることを整理すると、こんな感じです。
- 個人が拒否しても罰金・罰則はない
- 会社の人事評価とも直接連動しない
- 将来的にインセンティブ除外や保険料への影響が検討される可能性はある
- 拒否したこと自体が健康保険証の利用に影響することはない
罰則がないからこそ、「受けるかどうか」を自分の意思で選べる制度だと私は思っています。
ただ、次の章でお話しする「なぜ健保がしつこく勧めてくるのか」を知ると、見え方が少し変わってくるかもしれません。
特定保健指導の目的は生活習慣病予備軍を減らすため
40歳から74歳までのすべての被保険者および被扶養者に対して、特定健康診査(特定健診)が実施されています。
特定健診では、内臓脂肪型肥満に着目し、その要因となっている生活習慣を改善するための保健指導を行い、メタボリックシンドロームや生活習慣病の有病者&予備群を減少させることを目的としています。
なぜ実施率にこだわるのか?健保にはペナルティがある
「個人には罰則がないなら、なんで健保はあんなにしつこく実施率を上げろって言ってくるんだろう」って、不思議に思いませんか?私も保健師になりたての頃は、そこがずっと疑問だったんです。
実はこれ、罰則の矛先が「個人」ではなく「健康保険組合」に向いているからなんですよね。健保が実施率を上げたがる理由には、大きく2つの事情が絡んでいます。

実施率が低いと健保に罰金が科される
2018年度から、厚生労働省は特定保健指導の実施率が低い健康保険組合に対して、財政的なペナルティを強化する見直しを行いました。単一健保の場合、実施率55%以上をクリアしないとペナルティの対象になってしまうんです。


私が以前勤めていた企業の健保担当者から聞いた話では、大企業クラスの健保だと罰金が数億円規模になることもあるそうで、これを聞いた時は正直「そんなに?」と驚きました。
逆に実施率や重症化予防で成果を出せば、インセンティブ(報奨)がもらえる仕組みもあります。
ここで一つ注意しておきたいのが、面談中断者、つまり退職や自己都合で途中離脱した人はカウントに含まれないという点です。健保としては、この「数字」に本気で向き合わざるを得ない事情があるんですよ。
生活習慣病が重症化すると医療費・保険料も増大する
もう一つの理由が、医療費そのものの増大です。特定保健指導を受けずに高血圧や糖尿病、脂質異常症を放置していると、自覚症状がないまま進行して、脳血管疾患や心疾患につながるリスクが上がっていくんですよね。
実際にかかる入院費を並べてみると、こんな感じです。
| 疾患名 | 入院費 |
|---|---|
| 脳梗塞 | 約160万円 |
| 心筋梗塞 | 約160万円 |
| 糖尿病 | 約70万円 |
さらに脳梗塞後の麻痺でリハビリが必要になったり、糖尿病が悪化して透析になれば年間450万円ほど上乗せされることもあります。
日本は自己負担3割、健保負担7割なので、重症化するほど健保の持ち出しがどんどん膨らんでいくんです。
「罰金」と「医療費増大」、この2つが重なることで健保の財布は本当に苦しくなります。だからこそ、あなたのところにも案内がしつこいくらい届いていたんじゃないかなと、私は思っています。

健保の財政負担が大きくなると、個人が支払う保険料がさらに増大します。結果、自分にも返ってくるので特定保健指導は受けた方が良いですよ。
特定保健指導を拒否された場合の保健師の対応方法
ここからは少し視点を変えて、保健師や担当者の立場でお話ししますね。
「対象者が全然話を聞いてくれない」「案内しても無視される」なんて経験、現場にいると本当によくあるんですよ。あなたも似たような壁にぶつかったことはありませんか?
私自身、新人の頃は「指導」という言葉をそのまま使って案内を送っていたんですが、返信率が驚くほど低くて。あるとき先輩に「その言葉、上から目線に聞こえるよ」と指摘されて、初めてハッとしました。
①「保健指導」という呼び方から「面談」へ
「指導」という響きは、どうしても「あなたは何か間違っている」というニュアンスを含んでしまうんですよね。人に指示されるのが嫌だと感じるのは、ごく自然なことだと思います。
私はそれ以来、案内文でも面談中でも「健康についてお話しする面談」という言い方に変えてみました。
すると、面談自体を拒否していた人からも「それなら話だけでも」と返事が来ることが増えたんです。言葉ひとつでこんなに変わるのかと、正直驚きました。
②面談序盤は相手の心を読み取る
面談が実現しても、いきなり本題に入るのはおすすめしません。まずはその人が健康についてどう感じているか、心の準備段階を探るところから始めてみてください。
私がよく使うのは、こんな質問です。
- 健診結果を見てどう思われましたか?
- 今の生活で気になっていることはありますか?
- これまで健康について意識したことはありますか?
正直に言うと、保健指導をすんなり受け入れてくれる人はそう多くありません。
むしろ、素直に話を聞いてくれる人は自分で健康管理ができている人が多くて、指導自体があまり必要ないケースも多いんですよね。
③拒否理由別の声かけ例
拒否する人の理由は、実はいくつかのパターンに分かれます。理由がわかれば、声のかけ方も変えられるんです。
- 「自分の体のことだから放っておいて」
→ 干渉ではなく情報提供のスタンスであることを伝える - 「忙しくて時間がない」
→ 短時間・電話面談など選択肢を用意していることを伝える - 「どうせ怒られるだけでしょ」
→ 指摘ではなく一緒に考える場だと伝える - 「前に受けて意味がなかった」
→ 前回の面談内容を踏まえて変化を持たせる
私は以前、「忙しくて時間がない」と繰り返し断ってきた方に、5分だけの電話面談を提案したことがあります。
最初は乗り気じゃなさそうでしたが、実際に話してみると意外と会話が続いて、そのまま継続支援につながったこともありました。

理由に合わせて入り口を変えるだけで、反応がこんなに違うんだと実感した出来事でしたね。
保健師の質問力で保健指導を磨く
面談の場に来てもらえても、そこからが本当の勝負なんですよね。
「相手の反応が薄くて会話が続かない」「聞きたいことがうまく引き出せない」「気づいたら質問攻めになっていた」なんて経験、保健師なら一度は通る道だと思います。あなたも面談中に沈黙が続いて焦った経験、ありませんか?

私も駆け出しの頃は、チェックリストを埋めるような質問ばかりしてしまって、面談というより尋問みたいになっていたことがあるんです。相手の表情がどんどん硬くなっていくのを感じて、「これじゃダメだ」と痛感しました。
質問の仕方をほんの少し工夫するだけで、相手が自分から話し始めてくれたり、会話のキャッチボールが増えたりするんです。
特定保健指導での面談力をもう一段階上げたい方には、この一冊が参考になると思います。
よくある質問(FAQ)
ここまで読んでも、まだ細かい疑問が残っている方もいるんじゃないでしょうか。現場でよく聞かれる質問をまとめてみました。
まとめ|特定保健指導で実施率が低い時の対応
ここまで、特定保健指導を拒否した場合に何が起きるのか、そして拒否された側がどう関わっていくかをお話ししてきました。最後に整理しておきますね。
- 個人が拒否しても罰金や罰則はない
- 実施率が低いと罰則を受けるのは個人ではなく健康保険組合
- 罰金と医療費増大の両方が保険料上昇につながっている
- 拒否された時は、まず相手の心の準備段階を知ることから始めてみる
- 呼び方や声かけを変えるだけで、反応が大きく変わることもある
正直、私も最初は「なんでこんなに実施率にこだわるんだろう」と疑問だったんです。
でも背景にある仕組みを知ってからは、案内する側も受ける側も、もう少し納得感を持って向き合えるんじゃないかなと思うようになりました。
もしあなたが対象者として拒否を考えているなら、罰則を気にする必要はありません。ただ、健保がなぜここまで力を入れているのかを知った上で、一度だけでも面談を受けてみるという選択肢を持ってもらえたら嬉しいです。
保健師の立場であれば、今日お伝えした声かけの工夫を、次の面談で一つでも試してみてください。

