生活習慣病の予防のためにも睡眠時無呼吸症候群(SAS)の治療は非常に重要です。
一般的に車両を運転する業務に就いている人は、安全配慮義務のため睡眠時無呼吸症候群の検査を定期的に行わなければなりません。
それだけではなく、生活習慣予防にもなるので産業保健職は早期発見と対応に努めましょう。治療経過の確認まで実施し、安全に働けるようサポートしましょう。
産業保健師なら抑えておきたい!睡眠時無呼吸症候群(SAS)が危険な理由とは

睡眠時無呼吸症候群は様々な原因により寝ている間に呼吸が止まってしまう病気のことをいいます。
睡眠時無呼吸症候群が危険が理由:就業中に事故を起こす可能性が高くなる

日中の眠気が酷く、車の運転中は就業中に居眠りをしてしまう可能性があるからです。就業中に居眠りをすることで意識がなくなり大きな事故につながる可能性があります。
テレビで時折見かける運転手の事故ニュースは、このような健康起因事故の可能性も高く、保健師として予防の段階で徹底的に管理をする必要があります。
また、個人の命を落とす危険があるだけでなく、会社としても大きな損失や会社のイメージ悪化になります。
睡眠不足がさらに肥満の原因になる!?治療しないとヤバい理由

睡眠時無呼吸症候群は日中の睡眠が取れなかったり、中途覚醒が多かったりと睡眠不足の状態になります。睡眠不足の状態は食欲をアップさせるグレリンが上昇し、食欲を抑えるレプチンが低下します。
このホルモンバランスが悪くなることが原因で、ついつい食べてしまうようになり、さらに肥満になります。

睡眠が4時間以下の人は、7時間から9時間寝る人に比べて73%以上太りやすいという結果が出ています。原因は起きているときの消費エネルギー以上につい食べてしまうことが多いのかもしれません。
つまり、太りやすいホルモン環境になっているということです。肥満が睡眠時無呼吸症候群(SAS)を引き起こしますが、その状態がさらに肥満を加速させてしまう超危険な状態です。
放置すると突然死を引き起こす可能性も高くなるため、必ず治療をしましょう。
睡眠時無呼吸症候群は自分じゃ気づきにくい!
寝れいる時に呼吸が止まるため、自分ではなかなか気づきにくいです。8割の人が家族や周りの同僚などから指摘を受けて検査し、発覚します。
以下のような症状のある方や指摘されたことのある方は一度検査を受けてみましょう。
【症状】
☑激しいいびきをかく
☑呼吸が急に止まる
☑呼吸が乱れたり、息苦しさを感じる
☑何度も目が覚める
☑日中の眠気がひどい
睡眠時無呼吸(SAS)でよくある検査
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の検査は耳鼻科や睡眠外来で受けることができます。
検査の流れは、簡易検査➡精密検査(PSG検査)と2段階で行うのが通常です。
簡易検査 | 機械を借りて自宅で1泊装着する |
精密検査 | 1泊入院をし、専用機械を装着する |
簡易検査
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の簡易検査は寝ている間に指先にセンサーを付けて簡単に行うことができます。
イメージとしてはSPO2モニターのような感じです。
簡易検査で軽症~中等症となった場合は、精密検査(PSG検査:終夜睡眠ポリグラフ検査)は一泊の入院をおこないます。
PSG検査(一泊入院)
PSG検査は簡易検査の項目に加え、脳波や筋電図・眼球の動きを測定することで、睡眠の深さや覚醒反応の有無、睡眠効率などを呼吸状態の詳細とあわせて評価します。
《検査の基準値》
1時間あたりの無呼吸の回数(AHI)
正常 | 軽症 | 中等症 | 重症 |
<5 | 5~14 | 15~29 | 30≦ |
PSG検査の結果、中等症や重症と診断された場合は治療を開始します。
睡眠時無呼吸症候群はマウスピースまたはCPAPが主流!

治療は、マウスピースやCPAPという機械をつけて行います。
CPAPは睡眠中に専用のマスクを装着し、呼吸を助ける機械です。
使用開始初期は寝苦しいと感じる人も多いですが、慣れて十分な睡眠が取れるようになると一日を快適に過ごせるため機械がないと眠れない!といったようになります。
しかしCPAPは対症療法に近く、根本的な解決には至りません。十分な睡眠を確保できる状態にした上で、ダイエットしましょう。
減量に成功すれば、睡眠時無呼吸症候群は改善する可能性が高いです。
睡眠時無呼吸症候群の保健指導で絶対に言ってはいけないNGワード

「なるべく早く寝るようにしましょう。」
睡眠不足の人へよく指導しがちな言葉ですが、これは相手の生活状況を完全に無視した保健指導になります。
サラリーマンは「残業で夜遅くなってしまって寝れない」という方が非常に多いです。 相手の生活状況や業務内容などを理解し、 改善策を見つけましょう。
《改善策の例》
業務が必要以上に多いのであれば保健師の方から会社へ配慮してもらえるよう提案しましょう。
例えばですが・・・
①会社に業務の短縮ができないかどうか確認し調整してもらう
②仕事量が多い場合は、業務量の振り分けができないかどうか確認
このように生活の状況をしっかりと把握し、改善しやすい方法を一緒に見つけていくことが保健師の役割です。
相手を不快にさせない保健指導のポイント

遅くまで仕事で大変ですね。睡眠不足は肥満になりやすいホルモンを作りやすくなる環境になります。早く眠れる時はゆっくり休んでくださいね。
このようにまずは休養が摂れていないことを労わりましょう。
相手の状況を理解しています、と示すことも大切です。

寝不足の時は仕事中にぼーっとしてしまって、事故を起こさないか心配です。
昼寝でもいいですから、睡眠不足を解消するようにしましょうね。
このように相手にあなたのことが心配ですとアイメッセージを送りましょう。そうすることで、相手との信頼関係も築きやすくなります。
睡眠時無呼吸症候群の保健指導まとめ
SASは車両運転業務のある方は必ず行います。
治療がしっかり行えていないと、就業中に事故を起こすリスクが高くなります。また、体重も増大し高度肥満になっていく可能性が高いです。
保健師が労災の予防や従業員の健康管理をしっかり行えるよう働きかけていきましょう。