「動機付け支援の面談、なんだか毎回同じ流れになってしまう」
そんな風に感じたことはありませんか?
私も産業保健師になりたての頃、初回面談で何を話せばいいのか分からず、パンフレットを読み上げるだけの説明になってしまったことがあるんですよね。
対象者の方は終始うなずくだけで、正直「これで行動が変わるのかな」と不安になったのを覚えています。
動機付け支援は、保健師が対象者と直接関われるのが初回面談と6ヶ月後の評価、実質2回だけ。
この限られた時間で、対象者自身が「やってみよう」と思える目標にたどり着けるかどうかは、面談の進め方次第で大きく変わってきます。
この記事では、私が現場で試行錯誤しながらつかんだ、動機付け支援の面談で意識したい心構えと、実行可能な目標設定のコツをまとめました。
明日からの面談にそのまま使える内容にしたので、ぜひ最後まで読んでみてください。
動機付け支援とは?積極的支援との違い
そもそも動機付け支援って、積極的支援と何が違うのか、意外と説明できない方も多いんじゃないでしょうか。
私も新人の頃は「積極的支援より軽い版」くらいのイメージしか持てていませんでした。
動機付け支援は、特定健診の結果メタボリックシンドロームのリスクが出始めた段階の方が対象です。
具体的には腹囲が男性85cm以上・女性90cm以上、またはBMI25以上に加えて、血糖・血圧・脂質のリスクが1〜2個ある方が該当します。
一方の積極的支援は、リスクがより多く重なっている方が対象で、3ヶ月以上の継続的なサポートが必要になるんですよね。動機付け支援は初回面談と6ヶ月後の実績評価、この2回で完結する点が大きな違いです。
支援内容の違いをざっくり整理すると、こんな感じです。
| 動機付け支援 | 積極的支援 | |
|---|---|---|
| 対象者 | リスク軽度 | リスク中〜重度 |
| 支援期間 | 実質1回の面談+評価 | 3ヶ月以上の継続支援 |
| 保健師の関わり方 | 初回で行動計画をほぼ固める | 経過を見ながら計画を調整できる |
| フォロー体制 | 初回後のフォローが限定的 | 電話やメールでの継続フォローあり |
| ポイントなし | ポイントあり |
この違いを見ると分かる通り、動機付け支援は「やり直しがきかない一発勝負」に近い面談なんです。
積極的支援なら次回の面談で軌道修正できますが、動機付け支援は初回で立てた目標がそのまま6ヶ月間、対象者を支える柱になってしまいます。
だからこそ、初回面談のクオリティが結果を大きく左右する。ここが動機付け支援ならではの難しさであり、腕の見せ所だと私は思っています。
動機付け支援の面談で保健師が意識すべき3つの心構え
初回面談って、限られた時間の中で「何を伝えるか」ばかり考えてしまいがちですよね。でも実際に現場で対象者と向き合ってみると、伝え方以前に「どんな姿勢で座るか」の方がずっと大事だったりするんです。
私自身、面談経験が浅かった頃は「早く目標を決めなきゃ」と焦ってしまい、気づけば一方的にアドバイスするだけの時間になっていたことがありました。あとで振り返ると、対象者の方はほとんど話せていなかったんですよね。
そこから学んだのが、次の3つの心構えです。
対象者のありのままを受け入れる
対象者の生活習慣を聞いていると、「え、それはさすがに…」と思う場面、正直ありませんか?
お菓子を毎日1袋食べていたり、運動はゼロだったり。
でも、そこで表情に出してしまうと、対象者は一気に心を閉ざしてしまうんです。
まずは「そうなんですね、教えてくれてありがとうございます」と、良し悪しの判断を挟まずに受け止めることから始めてみてください。
説得ではなく気づきを促す
「運動した方がいいですよ」と正論を伝えても、対象者の行動はなかなか変わりません。
むしろ「分かってるけど、できないんです」と、心の距離が開いてしまうことの方が多い気がします。
私が意識しているのは、説得ではなく質問を投げかけること。
「今の生活を続けると、半年後どうなっていそうですか?」と聞くだけで、対象者自身が自分の言葉で気づきを語り始めることがあるんです。
これが動機付け支援の面白いところです。
カウンセリングマインドで関わる
保健師はつい「指導」という言葉に引っ張られて、教える立場になりがちです。
ただ動機付け支援で本当に必要なのは、対象者の隣に座って一緒に考える姿勢なんですよね。
具体的には、以下のようなスタンスを意識してみてください。
- 沈黙が続いても焦って話を埋めない
- 対象者の言葉をそのまま繰り返して確認する(オウム返し)
- 「正解」を保健師側から先に出さない
- 小さな変化や努力もきちんと言葉にして伝える
この3つの心構えは、正直すぐに身につくものではありません。
でも意識するとしないとでは、面談の空気が全然違ってくるんです。
次の見出しでは、この心構えを踏まえて、実際に信頼関係を築くための具体的なテクニックをお伝えしますね。
初回面談で信頼関係を築くコツ
心構えができていても、実際の面談で「じゃあ何をすればいいの?」と迷ってしまうこと、ありますよね。
私も最初の頃は、心の中で「受け止めよう」と思っていても、態度にどう出せばいいのか分からなくて空回りしていました。
信頼関係作りって漠然としていますが、実は面談の最初の数分で決まる部分が大きいんです。
ここでは、私が現場で効果を感じたコツを2つ紹介します。
非言語コミュニケーションを活用する
言葉の内容よりも、表情や相槌、座る位置の方が対象者に伝わっていることって、意外と多いんです。
腕を組んだまま話を聞いていないか、パソコンの画面ばかり見ていないか、一度自分の面談を振り返ってみてください。
私は面談の冒頭で、あえてペンを置いて対象者の顔をしっかり見るようにしています。たったそれだけで「ちゃんと話を聞いてもらえている」という空気が生まれるんですよね。
非言語コミュニケーションで意識したいポイントはこちらです。
・対象者と目線の高さを合わせる
・うなずきや相槌のタイミングを対象者の話す速度に合わせる
・資料に目を落とす時間を最小限にする
・声のトーンをやや低め・ゆっくりめにする
動機づけ面接法(MI)を取り入れる
「動機づけ面接法」という言葉、聞いたことはあっても実際にどう使うのか分からない方も多いんじゃないでしょうか。私も最初は本を読んでも「結局どう質問すればいいの」とピンときませんでした。
でも実践してみると、コツはシンプルで「はい/いいえ」で終わらない質問を投げかけることなんです。
例えば「運動していますか?」ではなく「普段、体を動かす機会ってどんな時にありますか?」と聞くだけで、対象者が自分の生活を振り返りながら話してくれるようになります。
正直、最初は私もこの質問の仕方に慣れず、つい閉じた質問をしてしまっていました。
ただ意識して開いた質問を増やしていくと、対象者から出てくる言葉の量が明らかに変わってきたんです。
あなたも次の面談で、一つだけでも質問の形を変えて試してみませんか?
面談全体の流れをおさらいしたい方は、初心者でも安心!保健師面談・保健指導の進め方7ステップを参考にしてください。
短時間で対象者の全体像を把握するポイント
動機付け支援の面談時間は、対面で20〜30分程度、オンラインでも30分ほど。
この短い時間で対象者の生活習慣から性格、やる気の度合いまで把握しなきゃいけないなんて、正直かなり無茶な話だと思いませんか?

私も駆け出しの頃は、質問項目を全部聞き終えることに必死で、気づいたら残り5分しかなかった…なんてこと、何度もありました。
今振り返ると、全部を均等に聞こうとしていたのが失敗の原因だったんですよね。
やる気の段階で対象者を振り分ける
全体像を把握する近道は、対象者を「やる気なし」「グレーゾーン」「やる気あり」の3段階に振り分けることから始めることです。
この振り分けができると、残りの時間で何を深掘りすべきかが自然と見えてきます。
段階を見極めるヒントは、健診結果をどう受け止めているかという反応に表れます。
- 「健診結果をご覧になっていかがでしたか?」
- 「今までご自分で工夫されたことや努力されていることはありますか?」
- 「今なにか心掛けていらっしゃることはありますか?」
対象者の返答によって、3段階のどこにいるかを振り分けることができます。例えば、以下のような返答があります。

- 「去年と変わらないし大丈夫」→ やる気なし寄り
- 「気になってはいるけど、何から始めれば…」→ グレーゾーン
- 「実はもう少し体を動かしたいと思ってた」→ やる気あり寄り
段階を見極める質問例をもっと知りたい方は一発でわかる!保健指導で行動変容ステージを見極める質問5選が参考になります。
「忙しい」を最大の言い訳にさせない
面談をしていると、ほとんどの対象者が「忙しくて時間がない」と口にします。
私も最初はこの言葉をそのまま受け取って、「そうですよね、難しいですよね」で終わらせてしまっていました。
でも「忙しい」は、実はいちばん便利な言い訳なんです。ここで深掘りせずに引き下がってしまうと、面談はそこで止まってしまいます。
「忙しい中でも、5分だけ空く時間ってどこかにありませんか?」と聞き返してみると、意外とすんなり答えが返ってくることも多いんですよ。
短い時間で全体像をつかむには、質問の数を増やすことより、対象者の反応から段階を見極めて、聞くポイントを絞り込むことの方がずっと効果的だと私は感じています。
実行可能な目標設定の立て方【具体例あり】
対象者の段階が見えてきたら、いよいよ目標設定です。ここが動機付け支援の面談で、いちばん力を入れたいパートだと私は思っています。
正直に言うと、私も最初の頃は「本人のためになるはず」と思って、少しハードルの高い目標を提案してしまうことがありました。
結果、6ヶ月後の評価で「結局続きませんでした」と言われてしまったことも一度や二度ではありません。
まずは健康への関心を評価する
目標を決める前に、対象者が健診を受けて何かしら行動したこと自体を、まず言葉にして評価してみてください。
「今日、こうして面談に来てくださっただけでも一歩ですよ」と伝えるだけで、対象者の表情が少し和らぐことがあります。
そのうえで「何をしてどうなったのか」を具体的に尋ねてみると、本人も気づいていなかった小さな変化が出てくることがあります。
・減量は成功したか?
・どれくらい減量できたか?
・どれくらいの期間続けられたか?
・予防行動を止めたきっかけは?
・減量を成功/失敗した理由は?
このように、過去に健康予防行動をしたときの状況を聞き出し、対象者にとってどのような行動が効果的であるかを探していきましょう。
「何がリバウンドのきっかけだったのか」を明確にすることで危険な状況を洗い出すことができます。
- 挑戦するだけでも効果が期待できると説明する。
- 以前の経験から失敗しやすい状況をピックアップして解決方法を一緒に考える
- 過剰な期待を抱いていないか確認をする
- 生活改善による緩やかな減量の重要性を強調する
目標は、いきなり大きなものを目指すのではなく、緩やかな減量を目指すものだと伝えることも忘れないでください。
目標設定で押さえたいポイント
目標を一緒に考えるとき、私はいつも次の項目をチェックするようにしています。
・過去に努力した経験や、本人の意向を確認しているか
・頑張れば70%くらい達成できそうなラインか
・実行すれば効果が期待できる内容か
・誰が聞いても分かる、具体的で明確な行動になっているか
・対象者自身が「これなら続けられそう」と思えるものか
あなたも面談中、対象者から「間食を減らします」というような、ふんわりした目標が出てきた経験、ありませんか?私はそのたびに「もう一歩具体的にしませんか」と聞き返すようにしています。
あいまいな目標を具体化する
「間食を減らす」だけでは、来月本人が振り返ったときに、達成できたかどうか判断できないんですよね。
ここで効果的なのが、具体的な例をいくつか提示して本人に選んでもらう方法です。
例えば「ポテトチップスを週2から週3に減らす」のように、頻度や量が数字で分かる表現に落とし込むと、対象者自身も6ヶ月後に振り返りやすくなります。
保健師が答えを決めるのではなく、選択肢の中から対象者が選ぶ。このひと手間が、実は目標の継続率を大きく左右すると私は感じています。
【まとめ】動機づけ支援者の指導ポイント
ここまで、動機付け支援の面談で私が大切にしている心構えや、目標設定の具体的なコツをお伝えしてきました。
読んでみて、「あ、これ自分もやってしまっているかも」と思う部分はありませんでしたか?
冒頭でお話しした通り、私も最初はパンフレットを読み上げるだけの面談から抜け出せずにいました。
でも心構えを変え、質問の仕方を少し工夫するだけで、対象者から出てくる言葉の量も、目標への納得感も明らかに変わっていったんです。
改めて、面談で意識したいポイントを整理しておきますね。
- 対象者の生活習慣を否定せず、まずはそのまま受け止める
- 説得ではなく、質問で気づきを引き出す
- 健診結果への反応から、やる気の段階を見極める
- 目標は数字や頻度で具体化し、対象者自身に選んでもらう
動機付け支援は、保健師が関われるのが実質2回だけという、決して余裕のある制度ではありません。
だからこそ、初回面談の進め方ひとつで結果が大きく変わってくるんですよね。
明日からの面談で、今日紹介した心構えやコツを一つでも試してもらえたら嬉しいです。対象者の反応が、きっと今までと少し違って見えてくるはずですよ。

