看護師の業務は、患者さんのスケジュールに合わせて行うため、複数の業務が一度に重なり、何から対応すべきか悩むことも多いですよね。
「どれから手をつけたらいいの?」
「対応が遅れてトラブルになったらどうしよう…」
そんな不安を感じるのは、決してあなただけではありません。実際、経験豊富なベテランナースでも優先順位に迷う場面はあります。
しかし、優先順位を誤ると、患者さんの状態が急変したり、最悪の場合、命に関わる事態に発展してしまうことも。だからこそ、正しい判断が求められるのです。
優先順位を決めるポイントは「緊急度」と「重症度」です。
マルチタスクが苦手でも、この2つの視点を押さえれば、優先順位をスムーズに決められるようになり、落ち着いて行動できるようになります。
本記事では、忙しくて混乱しがちな現場でも実践できる「優先順位の決め方」を詳しく解説。さらに、マルチタスクが苦手な人に向いている職場も紹介します。
多重課題(マルチタスク)とは?看護師に起こりやすい理由
多重課題(マルチタスク)とは、複数の業務や依頼が同時に重なってしまう状態のことを指します。
なぜ看護師はこれほど多重課題に直面しやすいのか。それは、業務のスケジュールが自分ではなく患者さんに紐づいているからなんですよね。
与薬の時間、検査の時間、処置の時間、それぞれの患者さんごとに決まったタイミングがあって、それが一つの時間帯に集中してしまうことも珍しくありません。
私が受け持っていた病棟でも、朝の情報収集を終えた直後に「Aさんの検温」「Bさんの点滴交換」「Cさんの検査出し」が同じ10分の中に重なる、なんてことが日常茶飯事でした。
一人で抱えるにはあきらかに無理のあるタイミングだったので、最初は本当に焦りましたね。
たとえば、次のような場面に心当たりがある方も多いのではないでしょうか。
- 清潔ケア中に、別の患者さんからナースコールが鳴る
- 検査出しの準備をしている最中に、急変対応が入る
- 与薬のタイミングと、他患者さんの移動介助が重なる
- 記録を書いている途中で、複数の呼び出しが同時に来る
こうした状況は特別なことではなく、受け持ち患者さんが複数いる以上、誰にでも起こりうるものです。
まずは「自分の要領が悪いから起きているわけではない」と知っておくだけでも、少し気持ちが楽になるんじゃないかと思います。
新人時代に感じやすい悩みについては、新人看護師の時間管理|先輩に怒られないための7つのコツとNG行動5選でも詳しく触れています。
優先順位を決める4つの判断基準
H2-2「優先順位を決める4つの判断基準」を書きました。
優先順位を決める4つの判断基準
多重課題に直面したとき、「何から手をつければいいかわからない」と固まってしまう瞬間、ありますよね。
私も新人の頃はまさにそれで、目の前のことに気を取られて、もっと優先すべきことを後回しにしてしまった経験があります。
そこで私が意識するようになったのが、次の4つの基準で考えるという方法です。
この順番で頭の中を整理すると、パニックになりかけたときでも判断がしやすくなります。
①生命の危険はないか(緊急度・重症度)
②安全管理上のリスクはないか(モニター・転倒リスクなど)
③時間指定・時間制約はあるか
④他のスタッフに任せられる仕事か
①生命の危険はないか(緊急度・重症度)

まず最初に確認するのは、生命に関わる危険があるかどうかです。
呼吸状態が不安定だったり、意識レベルに変化があったりする場合は、他のすべてを差し置いてでも対応する必要があります。
これは基準というより、看護師としての大前提に近い感覚かもしれません。

私自身、急変の可能性がある患者さんを目の前にしたときは、それ以外の業務が一瞬で頭から消えるくらいの感覚になります。
②安全管理上のリスクはないか

生命の危険がないと判断できたら、次に見るのは安全面のリスクです。
転倒しやすい患者さんが一人で立ち上がろうとしていないか、点滴やモニターの装着に問題はないか、といった視点ですね。
正直、ここを見落とすと後からヒヤリハットにつながりやすいので、私は「ちょっと待っててください」で終わらせず、安全が確保できているかまで確認するようにしています。
③時間指定・時間制約はあるか

3つ目は、その業務に「決まった時間」があるかどうかです。
与薬や検査出し、オペ出しなど、時間がずれることで患者さんに影響が出てしまう業務は、早めにスケジュールへ組み込んでおく必要があります。
反対に、清潔ケアや記録のように「いつやってもいい」業務は、隙間時間に回せることも多いんです。
この見極めができると、焦って全部を同時にやろうとせずに済みますよ。
- 手術、検査の前処置
(遅れると手術・検査ができないこともあります) - 手術、検査後のバイタルサイン測定
(全身麻酔・局所麻酔は全身に影響を及ぼすため全身管理が必要) - 化学療法などの点滴投与
④他のスタッフに任せられる仕事か

最後に考えるのが、「これは自分一人で抱え込む必要があるか」という視点です。
忙しいときほど、つい一人で全部やろうとしてしまいがちですが、応援を頼める場面は意外と多いものです。
私は以前、点滴のアラーム対応を先輩に一言お願いしただけで、目の前の処置に集中できた経験があります。
あなたも「頼っていいのかな」と迷った瞬間、ありませんか?迷ったら声をかけてみてください。
- 患者さんのトイレ介助
- 点滴投与
- ケアの準備
- 検査出し(レントゲンなど簡単なもの)
【事例で学ぶ】よくある多重課題シーンと対応例
ここまで4つの判断基準を紹介してきましたが、「理屈はわかったけど、実際の場面でどう動けばいいの?」と思っている方も多いんじゃないでしょうか。

私も新人の頃、知識としては知っていても、いざその場面に立つと頭が真っ白になることがよくありました。
そこで、実際に起こりやすい3つのシーンを取り上げて、判断の流れを一緒に見ていきたいと思います。
事例1)清潔ケア中に他患者からナースコールが重なったケース
登場人物
Aさん:認知症の既往があり、術後でベッド上安静中。清潔ケアの最中。
Bさん:術後経過は良好で、まもなく退院予定。トイレ介助を希望。
Cさん:点滴を持続投与中。ちょうどそのタイミングでアラームが鳴った。
Aさんの清潔ケアをしている最中に、Bさんからトイレ介助の希望が入り、さらにCさんの点滴アラームが鳴る。こういう三重の重なり、正直よくありますよね。
まず①の生命の危険で見ると、3人とも差し迫った危険はなさそうです。となると次は②の安全管理。Bさんは見守り歩行が必要な状態なので、一人でトイレに向かってしまうと転倒のリスクがあります。ここが今回の判断の分かれ目になるんです。
私ならナースコールで応援を要請し、Bさんの介助とCさんのアラーム対応を他のスタッフにお願いします。そのうえで、Aさんの清潔ケアを安全に終わらせることを優先します。
一人で三役こなそうとしないことが、結果的に一番安全な選択なんですよね。
事例2)検査出しの時間と与薬タイミングが重なったケース
登場人物
Dさん:9時に検査出しの予定が入っている。
Eさん:9時に内服薬の与薬タイミングが重なっている。
これは③の時間制約がポイントになる場面です。どちらも「その時間でなければならない」業務なので、単純にどちらか一方を後回しにするのは避けたいところ。
私だったら、まずEさんの与薬にどれくらい時間がかかるかを考えます。数分で済むものであれば先に済ませてからDさんの検査出しに向かう、逆に時間がかかりそうなら誰かに検査出しを頼めないか確認する。
「どちらが早く終わるか」で組み立てると、意外とスムーズに動けることが多いです。
事例3)急変対応と定時処置がバッティングしたケース
登場人物
Fさん:呼吸状態が急に悪化し、酸素飽和度が低下。
Gさん:定時の創部処置の予定が入っていた。
Gさんの処置に向かおうとした矢先、Fさんの状態が急変する。こういう場面に出くわすと、一瞬で心拍数が上がる感覚になりませんか?

私も何度か経験がありますが、ここで迷う必要はまったくありません。
①の生命の危険が最優先なので、Gさんの処置は一旦保留にしてFさんの対応に向かいます。Gさんの処置については、他のスタッフに時間変更を伝えるか、対応可能な人に引き継ぐ。
定時処置は多少時間がずれても大きな問題にならないことがほとんどなので、ここは迷わず判断してほしいところです。
3つの事例に共通しているのは、①→②→③→④の順番で一つずつ確認していけば、パニックになりかけても判断の軸がぶれないということです。
①生命の危険はないか(緊急度・重症度)
②安全管理上のリスクはないか(モニター・転倒リスクなど)
③時間指定・時間制約はあるか
④他のスタッフに任せられる仕事か
慣れるまでは頭の中で唱えるくらいでちょうどいいと思います。
看護業務で優先順位をつける際のNG行動
多重課題に追われているとき、余裕がなくなるあまり、ついやってしまいがちな行動があります。

私自身、新人時代に何度も先輩から指摘されて、初めて気づいたことばかりなんですよね。
ここでは代表的な3つのNG行動を紹介します。
- 忙しさのあまり口調や態度がきつくなる
- 「ちょっと待っててください」と曖昧な返事をする
- 一人で全部抱え込んでしまう
忙しさのあまり口調や態度がきつくなる
余裕がなくなると、自分では気づかないうちに言葉がぶっきらぼうになったり、表情が険しくなったりすることがあります。
私も夜勤で立て込んでいるとき、後から「あの時ちょっと冷たかったかな」と反省することがありました。
患者さんは看護師の些細な態度の変化に案外敏感なものです。忙しいときほど、意識して一呼吸置いてから対応するようにしています。
「ちょっと待っててください」と曖昧な返事をする
急いでいると、つい「ちょっと待ってくださいね」とだけ伝えて次の業務に向かってしまいがちです。
でも、これだと患者さんからすると「いつまで待てばいいのか」がわからず、不安にさせてしまうんですよね。
私は「5分後に伺いますね」「今別の対応中なので、10分ほどお時間いただけますか」というように、具体的な時間を添えるよう心がけています。
この一言があるだけで、患者さんの安心感がまったく違うと感じています。
一人で全部抱え込んでしまう
多重課題が重なると、「自分でなんとかしなきゃ」という気持ちが強くなりがちです。
あなたにも、そう思って一人で頑張りすぎてしまった経験、ありませんか?私は正直、何度もあります。
でも、それで対応が遅れたり、ミスにつながったりしては本末転倒です。
応援を頼むことは決して能力不足の証拠ではなく、むしろ状況を正しく判断できている証拠だと、今では思うようにしています。
マルチタスクが苦手でも大丈夫。今日からできる対応のコツ
ここまで読んでみて、「理屈はわかるけど、自分にできる気がしない」と感じている方もいるかもしれません。
正直、私も最初はそうでした。でも、いくつかの習慣を意識するだけで、少しずつ対応できるようになっていったんですよね。
朝の情報収集時にスケジュールを組んでおく
出勤して情報収集をする段階で、その日の業務をざっくりでいいので組み立てておくと、後がかなり楽になります。
時間指定のある処置を先に押さえておき、残りの時間に他の業務を当てはめていくイメージです。
私はこの習慣をつけてから、「あ、これ忘れてた」という焦りがかなり減りました。
完璧な計画である必要はなく、あくまで目安として持っておくだけで十分だと思います。
新人のうちから優先順位を考える癖をつける
多重課題への対応力は、一朝一夕で身につくものではありません。
だからこそ、新人のうちから「これはどっちを先にすべきか」を意識的に考える癖をつけておくと、経験を重ねるごとに判断のスピードが上がっていきます。
先輩に聞くのも一つの手です。
「私ならAさんを先にするけど、どう思いますか?」と聞いてみると、自分の判断とのズレに気づけることも多いですよ。
チームに頼ることをためらわない
一人で抱え込まないことについては前の章でも触れましたが、これは何度でも伝えたいポイントです。
応援を頼むタイミングを掴めずにいる方、意外と多いんじゃないでしょうか。
私自身、「こんなことで声をかけていいのかな」と迷った時期がありました。
でも実際に頼ってみると、思っていたよりずっとあっさり手を貸してもらえることがほとんどでした。困ったときは早めに一言、これに尽きると思います。
・朝のうちに大まかなスケジュールを組む
・判断に迷ったら先輩に聞いてズレを確認する
・声をかけるのをためらわない
・できなかった日があっても、自分を責めすぎない
・少しずつの積み重ねでいいと割り切る
マルチタスクは、生まれつき得意・不得意が分かれるものではなく、経験と工夫で誰でも対応力を上げていけるものだと、私は思っています。
焦らず、自分のペースで慣れていってくださいね。
マルチタスクが苦手な看護師におすすめの職場4選
ここまで対応のコツを紹介してきましたが、正直に言うと、職場によってマルチタスクの負荷は結構違います。
「どうしても病棟の忙しさが合わない」と感じている方に向けて、比較的マルチタスクの負担が少ない職場を3つ紹介しますね。
慢性期病棟
急性期病棟に比べて、慢性期病棟は患者さんの状態が比較的安定していることが多く、急変対応に振り回される頻度がぐっと下がります。
業務の流れも読みやすいので、あらかじめ立てた計画通りに動きやすいんですよね。
私も急性期での多重課題に疲れていた時期、慢性期病棟で働く先輩から「こっちは自分のペースを作りやすいよ」と聞いて、少し肩の力が抜けたのを覚えています。
じっくり患者さんと向き合いたい方にも向いている環境だと思います。
訪問看護師
訪問看護は一件一件、利用者さんの自宅を訪問して対応するスタイルです。
病棟のように同時に何人もの呼び出しが重なることがないので、目の前のケアに集中しやすいんです。
移動時間もあるぶん、一つの業務が終わってから次に向かうまでに自然と気持ちを切り替えられる、という声もよく聞きます。
多重課題が苦手だと感じている方には、意外と相性がいい働き方かもしれません。
保育園看護師
保育園は体調不良の園児対応や病み上がりのフォロー、感染対策などをするお仕事です。
保育園に看護師1人の配置ですが、病児保育とは違って早めの病院受診を勧めたり、お迎えがくるまでの見守りが多いです。医療行為もなく、小児経験者から大人気の職業です。


小児経験がなくても看護の知識と技術があればこなせる業務ですが、小児対応の勉強は必要不可欠です。
産業看護師(産業保健師)
企業内で従業員の健康管理を担う産業看護師は、病棟のような突発的な呼び出しがほぼありません。
面談や健康相談など、あらかじめスケジュールされた業務が中心なので、自分のペースで一つずつ対応しやすいんです。
私自身、産業保健師として働くようになってから、複数の業務が同時に押し寄せる感覚から解放されました。
「これなら自分にもできる」と思えたことが、今の働き方を選んだ理由の一つでもあります。
業務が重なり、忙しくなってしまった場合には、次年度から時期を調整するなど自己調整が可能なため、マルチタスクが苦手な人でも業務ができる環境にあります。
よくある質問(FAQ)
まとめ|看護師業務における優先順位表の再確認
ここまで、優先順位を決める4つの基準から、実際の事例、やってしまいがちなNG行動、今日からできる工夫まで紹介してきました。
最後に、判断に迷ったときすぐ見返せるよう、簡単な表にまとめておきますね。
| 順番 | 確認すること | 見るポイント |
|---|---|---|
| ① | 生命の危険はないか | 呼吸状態・意識レベルの変化など |
| ② | 安全管理上のリスクはないか | 転倒リスク・モニターや点滴の状態 |
| ③ | 時間指定・時間制約はあるか | 与薬・検査出し・オペ出しなど |
| ④ | 他のスタッフに任せられるか | 一人で抱え込まず応援を頼めるか |
迷ったときは、この順番で①から確認していくだけで大丈夫です。
全部を一度に考えようとするから頭が真っ白になるのであって、一つずつ見ていけば、意外と判断できるものなんですよね。
正直、私も今でも「これで合ってたかな」と振り返ることがあります。それくらい、多重課題への対応に「絶対の正解」はないんだと思います。
それでも、今日紹介した基準を頭の片隅に置いておくだけで、あなたの判断はきっと今より少し軽くなるはずです。

焦らず、少しずつ。あなたのペースで乗り越えていってくださいね。
それでも今の職場が辛い場合は、退職代行を利用 してその場から離れることも、自分の身を守るためには必要です。
退職を迷っている方は、看護師が退職代行を使うべき場面5選|トラブル別の注意点と安全な辞め方を参考に、今後についても考えてみてください。

